スキピオ

ビジランテのスキピオのレビュー・感想・評価

ビジランテ(2017年製作の映画)
3.5
韓国映画のような田舎を舞台にした先の読めないドロドロとした地方都市ノワール、を日本で実現。さすがもはや無視できない韓国映画のエッセンスを取り込む数少ない日本の映画監督・入江悠。「22年目の告白」に続いて骨太な良作を同じ年に立て続けにドロップしてきたのには脱帽。

ただ無駄を削ぎ落としすぎてエンタメ性にはかける感じ。ファムファタール(笑)であるらしい篠田麻里子をはじめとして女性登場人物陣のキャラクターが「居なくてもいい」レベルで弱い、これで舞台挨拶とか呼ぶのはかわいそう。

またお話もあえてなんだろうけど、背骨や出口のない群像劇のような体裁で、田舎あるあるだったり、暴走するネット右翼の若者など、日本人だからわかるネタがあったりと一つ一つは面白くてニヤリとできるんだけど、もう少し終盤でそれぞれが結実してほしかったかな。タイトル「ビジランテ」の意味「自警団」と三兄弟が中心なストーリーとの整合性にやや疑問。

それでも大森南朋、桐谷健太、鈴木浩介がメインというキャッチーさとは無縁(?)のキャスティング通り、「これどうなんの!?」という先の読めなさ、いい意味で後味の悪い鑑賞後感は、2017年の邦画のなかでも一級品。