松井の天井直撃ホームラン

空飛ぶタイヤの松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

空飛ぶタイヤ(2018年製作の映画)
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☆☆☆★★★

最近、1日に1時間は読書をしよう…と、主に映画化作品の原作を中心に読書をしていますが。その中では、抜群に面白かったのがこの原作でした。
但し、その面白さを忠実に活かすには。最低でも10回連ドラ位の量は必要でしょうか。
実際の連ドラ(未見)では5回だったらしいですが、それでもかなりの駆け足になったのでは?…と思えました。
原作を読んで思ったのは! 単純に大企業によるリコール隠しと。それに翻弄される被疑者側の、疑いを晴らす話だと思っていましたが。主人公にあたる被疑者赤松の闘いを縦軸とし、前編は販売部の沢田。後編は取締役狩野を中心とした。出世の為には生き馬の目を抜く男達の、野望満載な熱い内容。
大企業とゆう怪物の上で胡座をかき。何故大事な事を忘れ、リコール隠しへと走ってしまったのか?…と、考えさせられる話でした。

そんな分厚い群像劇を、映画にした場合。かなりの改定は必要不可欠で。おそらく、小学校での事件から発生する。PTA問題は全てカットされるだろうとは、容易に予想は出来ますが。大企業の出世争いとリコール隠し。グループ企業ゆえに付き纏う企業戦士として生き残る為のバランス感覚の有無。
そんな数多い登場人物達も。誰が残り、誰が描かれないのか?…凡そ2時間の尺に収める為にはどうなってしまうのか?…も興味深く。上手く纏まれば最高のエンターテイメントで有り。上手くいかなければ、壮大なる失敗作になるだろう?…と予想した。

結果として観客に提示された作品ですが。しっかりと押さえるべきところは押さえた、良質なエンターテイメント作品になっていました。

やはり予想通りにPTA問題は全てカット。
驚いたのは。大筋なストーリーの流れは、ほぼ原作通りになっていたこと。
この長尺な物語を、よくこの尺で纏め上げたものだと感心しました。

それでも。沢田役のディーンフジオカは、原作だと出世欲バリバリな男なのですが。映画に描かれていた人物像は、寧ろ赤松の様な正義感溢れる男に描かれていたのは、ちょっとだけ不満を覚えたのが本音。
企業内部のパワーバランスを擦り抜け。このリコール隠しを利用し、一気に次期重役クラスを狙う。そんな男だった筈なのですが…。
今人気の俳優だから…なのでしようか?但し、それによって、映画のラストシーンは原作には無い描写となり、この2人は対象的な人物で有る…と、観客には提示されている様では有りました。
まあ、エンターテイメント作品として「これも有りかな?」とは少し思いましたが!

以下、とりとめもなく…。

その他では、(原作では)後編で核となる狩野の狡猾さ。演じているのが岸部一徳だけに、どれだけの迫力で演じてくれるのか?…期待したのですが、意外にもアッサリとしていた感じが…。

真相を知り、最初に告発をする杉本。原作では、どこか腹の底が読めない人物で有り、イメージ的には濱田岳辺りが適任かと思っていたのですが。単純に正義感の強い男として描かれていたのには、やや不満を覚えるところ。

それと、これは不満では無いのですが。榎本役が男性から、女性ジャーナリストの小池栄子に変更されていた理由が不明で。これは何故だったのでしょうか?

刑事役の寺脇は、相変わらずな棒演技。
これだけ成長しない人…ってのも、或る意味凄いっちゃ凄い(ーー;)

最後のエンドクレジットでのサザンの歌には違和感しか無い(個人的意見なので他意はない)

数多くの役者達が登場するが、もしもこれを外国人の人が観るとどう映るのか?
特に、自動車メーカー側と銀行側の役者陣達は、背広でも有り。似た様な体型と相まって、1人1人の区別が付くのかどうか?がちょっと気にはなった。
ひょっとしたら天国で、山本薩夫が「こうゆうのは俺に任せて欲しいなあ〜」…なんて言っているかもね(^^;;

2018年6月17日 TOHOシネマズ府中/スクリーン3