図師雪鷹

空飛ぶタイヤの図師雪鷹のレビュー・感想・評価

空飛ぶタイヤ(2018年製作の映画)
3.8
池井戸潤の原作は未読。

これは、死亡事故(トラックのタイヤ脱輪)で整備不良を疑われた運送会社の社長、赤松が、巨大な会社であるホープ自動車に戦いを挑む物語だ。


赤松は、運送会社の社長として一所懸命に働き、部下からも信頼を得てきた。しかし、そんな中、一本の電話が。なんと、運送会社の社員が運転していたトラックのタイヤが脱輪してしまい、子供と一緒に歩いていた母親に当たって、その母親が死亡してしまったというのだ。結局、この事故を起こしたのは、赤松の会社の整備不良ということになった。
そこから赤松の悲劇は始まる。取引先の信用失墜。遺族からの罵倒。銀行からの融資に関する問題。赤松の子供に対するいじめなどなど。そして、ホープ自動車が造ったトラックに構造上の欠陥がないか調査してもらったが、欠陥はなかったという返事が来る。だがそんな中、三年前に、ホープ自動車のトラックを使っていた別の運送会社が同様の事故を起こしていたことが判明する。ウチではなくホープ自動車の原因で事故が起きたと確信した赤松は、事故の真相を暴くことを決意する。果たして赤松はそれに成功するのか。それとも失敗してしまうのか。ぶっちゃけ、映画ポスターの雰囲気的に成功すると思ってたけども笑


だが、どんな経緯で成功するのかを見てほしい。中小企業が起こしたこの脱輪事故は、大手自動車会社、その提携銀行、週刊誌の記者、別の運送会社へどんどん感染していく。特にホープ自動車の内部事情に関しては非常に詳細に描かれており、そこでの人間ドラマもまた面白い。会社を守るべきか守らざるべきか。その葛藤に惹きつけられる。

個人的には、ディーンフジオカ演じる沢田が良かった。販売部に属している彼は、脱輪事故に関する赤松の問い合わせの窓口になる。最初は問題に関わりたくなくて赤松からの電話に出ず、赤松とのアポイントメントも急用があるとか言って目を背け続けたが、あることを知りホープ自動車の陰謀に立ち向かうことになる。彼はおそらくこの物語を通じて一番変わった人だ。そこが魅力的だった。
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