キナ

死霊院 世界で最も呪われた事件のキナのレビュー・感想・評価

4.0
悪魔払いに失敗して亡くなった修道女アデリーナの事件を捜査するうちに…という物語。
ありがちながら、セオリー通りのビックリ箱的な恐怖演出と画力の強さがハマって面白く見られた。
身体に沁みる怖さは皆無だけど、パワー系でわかっちゃいるのにビクビクできて楽しめた。

神や悪魔の存在と信仰に対して異議を唱える若手記者ニコールの、立ち入り禁止も何のその!とばかりにズンズン進み続ける行動力の鬼っぷりがとても好き。
母に対するトラウマ的な感情からその信念は強く、自分の気持ちに素直に動き続ける所に好感が持てて肩入れすることができた。

アデリーナにまつわる人々に聞き込み、ただの精神病だったのか本当に悪魔に憑かれていたのかという所にスポットが当たる展開が面白い。
私自身が悪魔に対してまだまだ猜疑心があるため、同じような立場からその真偽を探るようなスタンスが好き。

当然物語が進むうちに後者の方に強く傾いてくるのだけど、悪魔の存在を認めざるを得ない現象が次々起こるので納得して受け入れることができる。もちろんそれが真実かどうかは置いておいて。映画として。
目が闇に包まれたアデリーナの恐ろしい顔面とその奇行は強烈。
特にベッドで呻く彼女の布団を剥いだ際のまさかの状況がお気に入り。アガレスと通じてしまったのね、すごい。

ただ、ニコールに襲いかかるクライマックスが案外サラッと終わってしまったことは残念。
手付け始めというか未満にすぎない段階とはいえもう少しグチャグチャに乱してくれたらなと思ってしまった。具体案を問われると困ってしまうが…。
悪魔についての本と絵を見ている時に一つ気になる伏線があったのに特に触れられず王道に戻ってしまったのもガッカリ。
ガラッと変わる展開があるかと待っていたのに。

メインの登場人物が美男美女で眼福であった。微妙すぎるサービスシーンもご愛嬌。
優しくて色気たっぷりのアントン神父なんてもはや罪だと思う。
修道女が恋をして外の男と関係を持った時の罪の意識と、神父に欲望を抱いてしまう無神論者の意識を対にしているんだろうか。

アガレスについて少し調べたところ、「逃げるものを戻って来させる」能力があるとのこと。
「逃げたら思うツボだ」とはそういうことか。
悪魔に対しての疑問は特に解決されないので引き続き色々観たり読んだりして学んでいきたい。
どうしても、高尚で強大で神に対比できる唯一の存在のような感覚が抜けない。
キナ

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