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ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のRのレビュー・感想・評価

3.4
チャーチルは世界史の人物の中ではかなり好きな方。ずんぐりした体躯、チャーミングな表情、独特な癖のある喋り方、数々の名言などなど、いろいろと魅力的。なので、どんな映画になってるのか気になってたんやけど、期待が高すぎたせいか、ほぼ全編めちゃくちゃ退屈やった😅 カメラワークとか照明とか映像面においては大変ハイクオリティで、見応えあったんやけど、その中で繰り広げられるドラマや演出が大事なんでしょうねー。ストーリーは、ナチスドイツがヨーロッパの国々に侵攻していってるなかチェンバレンが首相を辞任、代わってチャーチルが就任、保守党・労働党が参加する挙国一致内閣を組織した1940年からダンケルク作戦を実行するまでの約1ヶ月間を描いている。ダンケルクと言えば、僕にとってはノーランの最高傑作ダンケルクで、さまざまな立場の人々のドラマが異なる時間幅のなかで同時に描かれていくプロセスに無我夢中になったのが記憶に新しい。本作では、ダンケルクをイギリス首相の視点から描いている。大きな違いは、本作は、完全に会話劇であること。とにかく、会議、会談、会話で、人々が喋りまくる。てなると、演技のレベルが相当高いのを期待するが、僕にとって本作の演技はあんまり好きになれなかった。作風をそうしたいっていうのがあったんやと思うけど、普通に舞台劇を見てるような、大きく誇張された演技で、そういうのでも好きな作品はたくさんあるけど、なぜかこれは響かなかった。なんか深みと面白みが感じられなかったなー。全員のキャラクター、みんなそれぞれに薄味、チャーチルと国王、チャーチルと他の政治家、チャーチルと家族、チャーチルとタイプライター、どの関係もハリボテのような中身の薄さ。かつ説明的。しかも、要所要所で取り巻きの人たちが、彼らの言動の理由、背景、状況をセリフで説明してくれるのだが、親切すぎてありがた迷惑。全体の雰囲気が不自然になりすぎ。観客に内容を理解させることにそんなに注力しなくてもよいのではないかな、と思った。チャーチルのダンケルク作戦の裏側にあった、宥和戦略と武力戦略の間の葛藤も、あまり緊急性が感じられない。現地でのバトルの凄惨さが、気持ち程度に描かれているのだが、それだけでは作戦の重要性が伝わらないと思った。途中からだんだん眠気が襲ってきたので、何か重大なポイント見落としてるのかとしれないけど。チャーチルを演じるゲイリーオールドマンは確かに演技すごいけど、演技演技しすぎて、逆にリアルな人間らしさがなかった気がした。チェンバレンとハリファクスを演じたふたりのほうがニュアンスが利いてて、全体的にこのふたりくらいの微妙さのほうが良かったのでは。チャーチルの奥さんを演じるクリスティンスコットトーマスも、マスコット的に感じられる程度の付け足し感にしては、演技に熱がこもりすぎてて。んーーーーー。あと気になったのが、演出の人工的な膨張感。って何やねんそれって感じやけど笑、例えば、冒頭と最後の国会のとこ。特に最後のやつ。ブワーって人が立ち上がるシーン。カメラのズームインやパンに合わせてウェーブ的に起立の波が広がっていくねんけど、いやいや、普通もっとばらばらに動くやろ! 劇的コントロールしすぎ。そりゃアートにはエスカレートした表現が必要なのは当然。だが、バランスが悪いと、具合が悪いし、気持ち悪い。で、それの最大のモノが地下鉄のシーン……これは、キツい……😫 そんなこんなで、何もかも味が濃すぎて、それぞれの要素がそれぞれの良さを互いを打ち消しあって、いびつになってしまってる気がした。チャーチルやからコミカルさがあるのも当然だが、それすら消化不良。最後に、僕の大好きなWe shall never surrender.のスピーチ。エモ爆発しすぎ!!! チャーチルの淡々粛々としたぶっきらぼうな喋りを期待してたので、完全に冷めきった。というふうな感じで、いろんな期待を持った状態で見てしまった本作。期待なしで見たら、もっと肯定的に見れたでしょうか。高評価してる方達のレビューざっと見てみよっと。あ、でも、めちゃくちゃ良かったことが一点! オープニングとエンディングのタイトルの出方! でっかい画面にでっかい文字がドン!と出てくるのサイコーに好きなんです!
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