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ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のBluegeneのレビュー・感想・評価

4.3
予想以上に裏「ダンケルク」だった。

チェンバレンの退陣からチャーチルの首相就任、そしてダイナモ作戦発動までの3週間ーまさに英国の Darkest Hour を描いた映画。

独ソ不可侵条約によって後顧の憂いなく東欧を手中にしたドイツは、電撃的にベルギー、オランダを陥落させてフランスに迫る。ダンケルクに追い詰められた英国兵を救うために講和を結ぶべきか、徹底抗戦するべきか。その後の世界の運命を決めた瞬間を演じ切ったゲイリー・オールドマンはアカデミー主演男優賞に相応しい。

原題のとおり全体に暗く沈んだ映像が続くが、チャーチルの型破りな性格も手伝って意外とユーモラスなシーンやセリフも多い。入りたての若い女性タイピストの目を通じてチャーチルの人となりを描く手法はやや平凡だが、演じたリリー・ジェームズの可憐さに免じて良しとしよう。

この時にチェンバレンが首相を続投してドイツと講和していたら…という歴史改変SFをレン・デイトンが書いていて、ドラマ化もされているのだが、この映画を観るとそうなった可能性が実はかなり高かったのだとわかってぞっとした。もしエドワードが王位にあったらその可能性はさらに高かったろう。チャーチルとジョージ6世という「本当はそこにいるはずがなかった男」によって世界は救われたのかもしれない。
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