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ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のKUBOのレビュー・感想・評価

4.5
映画の日は「TOHOシネマズ日比谷」で「ウィンストン・チャーチル(原題: DARKEST HOUR)」。話題の場所だけに朝から満席の盛況ぶり。

もちろんアカデミー主演男優賞を受賞したゲイリー・オールドマンと、彼をチャーチルに変えたメイクアップ賞受賞の辻一弘の技を見に来たんだが、見始めた時から飛び込んできたのはその「声」だ。熊倉一雄が英語を喋っているようだ。とてもゲイリー・オールドマンに聞こえない。

舞台は、ドイツの侵攻がベルギー、フランスに及ぶ1940年。新首相に選ばれたチャーチルが「徹底抗戦」か「ドイツとの和平」か、の重大な決断を下すまでの苦悩を描く。

この「ドイツとの和平交渉」という選択肢が実は存在したというのは、わりと最近になってわかったこと。本作はその歴史的新事実に基づいて作られているが、もしチャーチルがダンケルク以前の段階でドイツと和平を結んでいたら、ヨーロッパの地図はどうなっていたことか?

また作品後半は、あの「ダンケルク」からの撤退作戦がストーリーの中心になる。クリストファー・ノーランは政治は描かず徹底的に戦場での主観視点で描いたが、ジョー・ライトは戦場は描かず政治の側から描いた。本作を見た後、またノーラン版「ダンケルク」を見たくなった。

あの救出作戦の裏で、ダンケルクからドイツ軍の注意をそらすためだけに、カレーにいた守備隊4000人に徹底交戦を指示したチャーチル。その最後の電報で「最後まで徹底交戦せよ。だがカレーへの救出作戦はない」と残酷な事実を伝えなければならない指導者の苦悩は計り知れない。

「言葉は世界を変える。1940年、ウィンストン・チャーチルを通じて起きたことです」と脚本のアンソニー・マクカーテンは語る。

ゲッペルスは「チャーチルがいなければこの戦争はドイツの勝利でとっくの昔に終わっている」と彼の日記に記している。

We shall never surrender!

チャーチルは言葉を武器に変えて戦場で戦った。

リーダーのあり方を問う重厚な作品であった。



# アメリカはルーズベルトが大統領選挙で「参戦しない」と公約していたため欧州の戦争に参加出来ずにいたが、日本が真珠湾を攻撃したのを機に第二次世界大戦に参戦、これがノルマンディー上陸作戦につながる。日本が真珠湾を攻撃していなかったら、アメリカは参戦できず、欧州戦線の結果も大きく違っていたかもしれない。日本の真珠湾攻撃を一番喜んだのは、かのチャーチルなのだと言うのだから歴史はおもしろい。
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