ノラネコの呑んで観るシネマ

ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

4.6
見応えたっぷり。
功罪あるチャーチルの“最も暗い時間”、首相就任直前からダイナモ作戦後の、あの有名な庶民院での演説までの四週間を描く。
これは「ダンケルク」の空・海・防波堤の1時間、1日、1週間では描かれなかった、「1ヶ月」の物語だ。
前評判通りゲイリー・オールドマンが圧巻の名演。
今の時代にいたらパワハラ・セクハラ爺さんだろうが、攻撃的でパワフルな表の顔と繊細な裏の顔を見事に演じ分けて素晴らしい。
あらゆる面で対照的な、リリー・ジェームスの秘書とのコンビにしたのが上手くて、だんだんとチャーチルが可愛く見えてくる。
原題通り、エレベーターやドアの窓など枠でチャーチルが闇に囲まれているショットが印象的。
国王との会食シーンでも、彼だけが逆光で闇の中にいる。
彼はドイツと戦う前に、党内主流の和平派との権力闘争に勝たねばならない。
権力者の孤独を表す秀逸なイメージ。
これもある意味、実にタイムリーな作品。
本作に描かれるチャーチルのリーダシップは、現在の世界に置き換えるとどうなるのか?
もしもこの時代の英国人だったら、支持するのはチャーチルかチェンバレンか?
色々考えさせられる。
しかし、日本軍の真珠湾攻撃を、世界の誰よりも喜んだのは、たぶんこの人だったんだろうなあ。
ブログ記事:
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