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ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のkoyaのレビュー・感想・評価

4.5
高校の時、世界史の先生が黒板に「健啖家」と書いて、「ウィンストン・チャーチルは健啖家だったと言われている」と話した事を思い出しました。
健啖家とは、よく食べ、よく飲む人の事。
この映画の中でも、ゲイリー・オールドマン演じるチャーチルが、非常事態の最中、国王との昼食で、国王はげっそりしているのに、チャーチルはもりもりと食べて飲む姿って描かれていました。

大人の映画だな、と思うのは、日本では専門に勉強した人以外、名前は有名で知っているけれど欧米人ほど詳しくはない日本で公開して「知っていて当然だから説明しません」がどうしても多くなっている事ですね。

でも、それは後から調べればよい事で、この映画では私の中では、ラジオ演説をした首相、健啖家だった人のあれこれが見られて大変、勉強になりました。
ホーキング博士を描いた『博士と彼女のセオリー』とよく似ています。
(どちらもアカデミー賞主演男優賞を取ってますね)

ゲイリー・オールドマンはほっそりした人という印象だし、実際、ほっそりしているのですが、この映画ではでっぷり貫禄十分で、政治家として敵を作りながらも、初志貫徹する姿を描きます。決して、ヒーロー、英雄ではなく、どちらかというとクセのある嫌われ者という描き方が新鮮。

しかし、この映画の良さは映像の美しさだと思います。どのシーンも構図がびし、と決まっている、色合いも落ち着いていて派手なシーンはなくても非常に映像がクリアで綺麗。そして役作りに一年かけた、というのめり込みぶり。美術、衣装も素晴らしく、国王とチャーチルのスーツは特注ですってエンドクレジットに出てました。

政治家であるということは、上流階級であり、階級社会のイギリスというのも垣間見える映画です。国民の声を聞け、と生まれて初めて地下鉄に乗ったエピソード(地下鉄はsubwayではなくてundergroundと言っていましたね)や、ヒトラーとは又違う演説の上手さ(口の上手さ)など興味深いです。

やはり、政治家となると国が敗戦する、滅びる、そんな瀬戸際でも朝からもりもり食べ、酒を飲むくらい肝が据わっていないとできないんですね。
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