matsuitter

ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のmatsuitterのレビュー・感想・評価

5.0
演説マニアヨダレモノの演説尽くし映画。傑作。

#Filmarks2018

以下ネタバレ。

迫り来る敵にいかに立ち向かうかを演説に継ぐ演説で鼓舞しつづける展開はまさに歴史の追体験。堅い政治ネタをわがままジジイのコミカルさで中和し、日付による章立てを作り、日の終わりに必ず彼の言葉でクライマックスを用意する構成も美しい。史実をエンタメに昇華させることに成功した傑作でした。

まず1点目、この映画の面白さを支えていたのは、日付変更による章立て構成です。これがまさに発明だった。15分に1回ぐらいで日付が変わるのは朝ドラの話の区切りのような感じで、その度に小さなクライマックスが訪れる。その山場を締めくくるのはいつも演説や電報や独り言といったチャーチルの言葉。見せ場を何度も自然に発生させるこの独自の構成力こそが、面白さを引っ張る仕掛けといってもよいでしょう。

最後の章はホントうまかった。国王、電車の市民、そして議員たちという流れで徹底的にチャーチルが語りまくり演説しまくり。この間ずっと号泣したのでこんな経験は年1レベルでした。

そして2点目、ゲイリーオールドマンがついにアカデミー賞というのも納得の名演技。メイクアップ賞辻さんも素晴らしく完全に別人に見えました。ちょっと角度が変わって一瞬だけゲイリーオールドマンに見えたりする瞬間があって、「あっ!」ってなったのが個人的にツボ。

余談。

完全に「ダンケルク」の続編ぽいのが意表をついて最高点になった理由かもしれない。あのとき現地では、カレーでは、ロンドンでは、という視点のスイッチを想起せずにはいられない。あの戦場が頭をよぎって気持ちが高まりすぎて中盤から泣けて泣けて。意図せずして2つで1つの映画となったんじゃないかしら。

余談2。

あの愛国心に訴える演説を聴いて、私は進撃の巨人を想起したんですよね。いやむしろ巨人のほうが第2次大戦など国難の政治演説を参考にしてるのかと思うけど、本当に追い詰められたときこそ愛国心が芽生えてそこに訴えるというか。日本でも戦時中の心理の描写とか、最近だと震災のときとかに同じものを感じたんよね。
matsuitter

matsuitter