ワイカ

ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のワイカのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

第二次世界大戦下の1940年、ヒトラーのドイツに完全に押され気味だったイギリスの首相に、ほとんど貧乏くじ状態で担ぎ上げられながら、イギリスを戦勝に導いたチャーチルのお話。

とにかく知らない史実に圧倒されました。チャーチルって、なんとなく豪腕の策士ってイメージを抱いてたんですが、この映画で描かれてたのは、閣内で孤立し、苦悩しながら自分を信じて決断する変わり者で嫌われ者の政治家の姿でした。

おそらくあの状況なら、和平交渉を選ぶのが国民の命を預かる政治家の常識的な判断でしょう。徹底抗戦なんてのは、ほとんど一億玉砕に近い危険思想だったと思います。そんな政治家が今も評価されて、ロンドンの中心部に銅像や博物館まで立っちゃうのは、やはり勝てば官軍ってことだと思います。

それでも、敵だらけの政界で信念を貫く姿は素直にカッコいいと思いました。地下鉄で乗客たちに意見を聞くシーンも感動的でした。それを国民の総意みたいに利用する辺りは、ポピュリズム政治家のやり口と言えないこともないですが、ほとんど勝てる見込みのない戦いで逆転するには、こういう人が必要なんだろうな、と思いました。

演出はBBCのテレビドラマみたいで、ちょっと安っぽくて淡々としてるし、映像はイギリスの天候を意識してか全体的に暗いし、正直パッとしないんですが、それを補って余りある内容です。

そしてこの映画を魅力的にしてるのは、やはりゲイリー・オールドマンの演技でしょう。この人こんな声と喋り方だっけ?ってくらい、チャーチルになりきってます(たぶん)。噂の特殊メークも自然過ぎて、いくらよく見てもメークには見えませんでした。言われないとゲイリーさんだとは気づかないかも。それがまたストーリーに説得力を与えてました。

最後のシーンも、先に「ダンケルク」を見てたおかげで、おー、ってなりました。少なくともダンケルクの戦いの軽い予備知識は持ってから見た方がよい作品です。この後に「ダンケルク」を見ても楽しめるかも知れません。
ワイカ

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