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ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

ナチスドイツの勢力が大きく拡大しつつあった第二次世界大戦下、主人公チャーチルは新たに首相に任命される。ドイツに対して主戦論を唱える彼だったが、戦局は敗色濃厚で、周囲は講和の道を探るべきだと主張し、首相と大臣らは対立する。チャーチルは徹底抗戦か講和かの難しい選択を迫られるのだが…という話。ゲイリー オールドマン主演。

重厚な政治ドラマで、緊迫感が半端ない。
混迷の時期に首相の座についたチャーチルは、神経質で怒りっぽく、酒やタバコを常習してダミ声でブツブツと話すというやや不快な人物として描かれている。その彼が難局に立たされたイギリスを断固たる意志と言葉の力で先導し、勝利に導くまでの過程を見事に描いている。リリー ジェームス演じる秘書官が、チャーチルの声明をタイピングする作業を通して、彼の苦悩や迷いなどの隠された人格部分、そして彼の言葉の力についてを細やかに描写している点が分かりやすくて良かった。首相就任時の所信表明演説と物語ラストの演説が、内容的にはそこまで差異はないのに、国民感情を把握して寄り添った結果、聞いた議員たちの反応が真逆なものになるのも演出的に上手いと感じた。最初は上手くいってなかった王とチャーチルが終盤に意気投合する部分は感動的。
微妙に感じたのは、我々は歴史からナチスドイツの所業を知っていて、講和への道は誤った選択になると分かってはいるが、実際に主人公と同じ立場に立ったなら、被害が甚大と予測される戦いを避ける決断を下しそう。イギリス人でもないので愛国心については共感できなかったし。そこは伝記映画なので仕方ない部分ではあるけれど。
ゲイリー オールドマンはやはり何やらせても達者で、チャーチルの特殊メイクをしていても目が個性的ですぐ彼だと分かる。
この映画観た後にクリストファー ノーランの「ダンケルク」観ると良いのかもしれない。
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