りか

ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のりかのレビュー・感想・評価

4.5
最近歴史と政治を勉強し直したことから、歴史や事実に基づく映画作品が観たいと思い手にとった本作。
いやあ...よかった。
何がよかったって、もちろん本作自体がよかったというのもあるけれど、歴史的な結果としての経緯や事実はどうかはいったん端においたとしても、チャーチルがどういう人だったのか、どんな経緯でその判断をしたのか、当人から話された事実ではないとしても、チャーチルの人柄やその頃の世界情勢やイギリスやヨーロッパを取り巻く環境、国民の意思がどうだったのかを知ることができて本当によかった。
そしてそれをこんなふうに作品にして世に出してくれる人たちがいてくれることにまず感謝したい。
映画とはこうあるべきだよなあと思った。

チャーチルは前情報として嫌われ者とか、劇中も周囲から酔っ払いだとか信用ならないとかあれこれ言われていたけれど、終始愛嬌があって、人間味があって、たしかに感情大爆発して子どもっぽいところもあるけど、そこも含めて割と最初から人柄にとても惹かれていた。
朝から酒を飲むって、アル中な感じだしちょっとやばい奴っぽいけど、そうならざるを得ないほどの責任やら重圧やらあったのだろうなあと思う。
戦時中の海軍大臣だの首相だのなんて、絶対になりたくない。
自分の判断ひとつで、国民を、国を壊滅させてしまうかもしれない。
もちろん救うこともできるかもしれないけれど、背水の陣でほぼ壊滅状態のギリギリの精神状態の中、冷酷な判断も下さないといけないし、国民を奮い立たせて導かなければならない。
言葉こそ巧みで、啖呵を切るような勢いのある彼だったけれど、そもそもその言葉を紡ぎ出す才能と、それを国民に堂々と語りかけるほどの勇気と気概が凄いと思ってしまった。
途中、秘書のタイプライターのレイトンとの会話や、周りからの賛否から和平交渉に応じるかどうかに悩む姿が胸の奥をギュッと掴まれるようで、そこからジョージ6世との部屋でのシーン、カレー隊のニコルソン准将への電報のシーン、市民との地下鉄でのシーン、そして大臣たちを鼓舞するシーンからラストまではずっと泣きっぱなしだった。
戦争なんて、誰も幸せにならない。
でも戦わなければ、戦い続けなければならない理由もあるんだろう。
どれが正解かなんてわからないし、戦争しないことに越したことはなくても、国民のアイデンティティや国の歴史と今後の発展と、周囲の国との関係性をと広い視野で考えなければならない。
政治って難しい。
でも政治と歴史を、国民こそ知らなければならないよなあと思った。

本作での華である、リリージェームズ、よかった!
チャーチルとの信頼関係が少しずつ少しずつ築かれていくところや、裏ピースのくだりはほっこりさせた。

そして何よりよかったのは、チャーチルの奥様!素晴らしすぎる😭✨✨
わたしもこんな女性になりたい。
どんな時も彼に寄り添い、彼を励まし、守り、鼓舞し続け、気丈に振る舞う彼女が本当に素晴らしかった!
チャーチルが泣いて苦悩しているときにかけた言葉が素晴らしすぎてボロボロ泣いてしまった。
彼女の言葉をここにメモしておこう。

「あなたは完璧じゃないから強いの。疑問を持つから賢いの。その不確かさこそが、最も賢明な言葉が生むのよ。」
りか

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