Yoshishun

孤狼の血のYoshishunのネタバレレビュー・内容・結末

孤狼の血(2018年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

この映画、狂うちょる……
ブタの糞から始まったかと思えば、桃李の渋すぎる一服で終わるんじゃ。


役所広司×松坂桃李×白石和彌監督で描く、東映復刻任侠映画シリーズ第一作。ヤクザ壊滅のためなら手段を選ばないマル暴・大上と、県警から移動してきた若きエリート刑事・日岡がヤクザと交流のある金融会計士失踪事件を追う。
『仁義なき戦い』などの名作任侠映画を世に放ちながらも、近年の作品ではすっかりその風格を失ってしまった東映が、満を持してヤクザ映画にカムバック。

とは言ったものの、根っからのヤクザ抗争が描かれているわけではなく、あくまで主人公はマル暴と若手刑事。暴力団組織と関係を深め利用し、そして壊滅させるのを目的とした、最早ヤクザと相違ない荒くれ者たち。仁義等今時古臭いと云わんばかりの広島弁の強面警察が、己の思念と疑惑渦巻くヤクザ達に翻弄されていく。まさかの大上の途中退場には驚いたが、本作の真の主人公は日岡であったことに気づかさせる。警察内部にも敵だらけであった孤狼の血を受け継ぐように、あんなにウブな眼差しを向けていた日岡が、無精髭生やしたイメチェンで、本物の狼へと変貌していく。映画賞を総なめにした松坂桃李も、以前のような若手俳優ならではのフレッシュさをもみ消した泥臭さで溢れ返り、『娼年』含めてまさに新境地とでもいうべき熱演だったように思う。勿論、役所広司に関しても本当にマル暴のそれにしか見えない気迫で襲い掛かる番犬のような獰猛さだった。

しかし、大上と警察上層部との関係性が掘り下げられていないため、パッと出のスクラップブックに書き留めた上層部の不祥事の中身が薄く感じてしまった。もっと内部でのいざこざを丁寧に描いていれば、大上が孤狼へと成り果てた経緯がより感情的になり、大上という人間に共感を覚えられたように思う。

来月公開予定の続編は、大上の意志を受け継いだ日岡がどのような人間になっているか、今から非常に楽しみだ。
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