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孤狼の血のKUBOのレビュー・感想・評価

孤狼の血(2018年製作の映画)
4.5
3月10本目の試写会は、白石和彌監督最新作「孤狼の血」。

完成度、高(たか)!

白石和彌と言えば「凶悪」の振り切れたバイオレンスといった印象が強いが、前作「サニー 32」ではファンの期待を裏切り「大丈夫か?」と思わせたが、これは良かった、すごかった!

「『アウトレイジ』に対する東映の答えですね by 古舘伊知郎」というコピー通り、久しぶりに東映らしいヤクザ映画だ。

舞台は暴対法制定前の昭和63年、2つの組がシマを取り合い一髪触発の広島。

役所広司の貫禄あるマル暴の悪徳刑事「大上」がいい! 先日「OH LUCY!」で、役所広司らしいいかにも良い人役を見ているだけに、180度違う悪徳刑事に漂わせる雰囲気の凄みに、役者としてのただならぬ技量を感じさせる。

この悪徳刑事のバディとして県警本部から送られた若きエリート刑事「日岡」が松坂桃李。最初は何をやっても対立するふたりだったが、物語が進むに連れてこの松坂桃李がどう変わっていくかが一番の見どころだ。

主役2人の他にもキャスティングに隙が無さすぎ! クラブのママ役の真木よう子がハマりすぎ! 対立するヤクザ・右翼の面々に、江口洋介、石橋蓮司、竹野内豊、ピエール瀧。県警の曲者たちに、滝藤賢一、田口トモロヲ。ちょい役だけど、中村獅童。そして意外に(失礼)存在感が大きいのが薬局の店員役の阿部純子。キャスティングだけから見ても「アウトレイジ」とがっぷり四つだ。

マル暴の悪徳刑事と言えば、白石監督自身の「日本で一番悪い奴ら」があるが、本作はそこから笑いの要素を除いてさらにマジにした感じ。

また「アウトレイジ」は機関銃撃ちまくっても笑っちゃうバイオレンスコメディだと思ってるんだけど、本作は伝統ある「東映」の系譜を受け継ぐ作品なんだろうな。

新しさはない。昭和のヤクザと昭和の刑事の話だ。だが、その中にバイオレンスをこよなく愛する白石和彌の血が脈動している。

私は松坂桃李という俳優は、何をやっても中途半端だと思っていたのだが、本作で初めて彼の演技に魅せられた。特に終盤の松坂桃李の目に、白石和彌作品の何たるかを見た。

ビックリ!ドッキリ!栗と◯!

「凶悪」以来の傑作だ。
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