龍じん

孤狼の血の龍じんのレビュー・感想・評価

孤狼の血(2018年製作の映画)
3.8
イオンシネマポイントが6個たまったので無料鑑賞。

往年の荒海東映ロゴマークに始まり、冒頭ナレーションで現状説明してしまうのは『仁義なき〜』へのオマージュか?任侠映画はこうでなくちゃいけねぇw

空調など無いのが当たり前の昭和のムシムシ感、警察・極道・普通の人達の生活すらも今程洗練されていない雑多で猥雑な感じ。白石監督独特の細部にこだわったセットや小道具が効いてる。暴対法施行前の血生臭い何でもアリの時代、みかじめ料やシャブ売買など泥臭いヤクザ描写にはむしろインテリヤクザが跋扈する平成以前のひりつく様なギラギラ感・緊張感が感じられ◎。

ただ結局この作品はヤクザ映画ではなく刑事映画であった。『仁義なき戦い』のヤクザ達の狂気はおのが欲望に忠実に従った結果であり他者に理由を置いていない。主人公大上の目的がその実カタギを守ることのみだったというのは少々肩透かしで、終盤明かされる彼のいい人設定も個人的には蛇足。ガミさんには徹頭徹尾「悪」に対抗するには「悪」の限りを尽くすアウトサイダーキャラを貫いて欲しかったかな。欲望達成のためには手段を選ばない人間の裏暗いドロドロとした狂気が描かれるのを期待していたので、作品自体尻つぼみに感じてしまい残念。

しかしながらテレビ放映されることを最初から念頭に置いていない様な思い切りの良い暴力映画の誕生に白石監督には拍手を贈りたい。
内容が内容だしR指定だし痛いシーン多いし観る人を選ぶのは確かなんだけど、エログロ耐性ある人なら是非観て欲しい。

役所広司は狂気をはらんだ役を演(や)らせたら並ぶ者はいないですね。本作の緩急のある役どころは彼でないと務まらないかと。松坂桃李の豚小屋殴打シーンキレながらもチンピラを叩きのめし続ける冷たい眼差しに背筋がゾクリ。石橋蓮司の安定の暗躍する大親分。強いて注文をつけるならば、これだけ豪華な役者が勢揃いしていて各々の見せ場があまり無いコトが不満。江口洋介最後だけだし竹野内豊・嶋田久作・伊吹吾郎・中村獅童途中でどこ行った?失踪した経理の妻役がMEGUMIだったことには最後まで気が付きませんでしたw
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