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孤狼の血のTSのレビュー・感想・評価

孤狼の血(2018年製作の映画)
4.4
【抗争に潜り込む刑事の信念】92点
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監督:白石和彌
製作国:日本
ジャンル:極道
収録時間:126分
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2018年劇場鑑賞44本目。
これはヤバイ。今年度ナンバーワンの邦画候補であり、個人的にこれを破れるのは超感動系のものがこないと厳しいかも。役所広司が出る作品に駄作なし。白石和彌がメガホンをとる作品にハズレなし。その二人がマッチングしたため面白くないわけがない。当初はドラマの続きモノかと思い気にしていませんでしたがあまりの評価の高さに気になり鑑賞。結果的に昨日見た5本のどれよりも良く、日本ヤ○ザ映画史に残る傑作であると感じました。

昭和63年の広島。暴力団がうごめく呉原では五十子会系の加古村組と地元暴力団の尾谷組が睨み合っていた。そこに迫るベテラン刑事の大上と新任の日岡だが。。

広島の暴力団を扱った映画なんて『仁義なき戦い』の二番煎じじゃないかと思われるかもしれません。安心してください。面白さは抜群であり、単作としての破壊力は同作に勝るとも劣らない。何しろ役所広司が最早ヤクザみたいな警察を演じるわけですから抜群に面白い。役所広司は未来の菅原文太なんじゃないかと思える程。一方、彼とライバル関係にある江口洋介も渋い。ラストのところといい、漢の中漢といった感じで一言一句いちいちカッコ良い。竹野内豊はあまり出番がありませんでしたが、こういう渋い中年男性が今作を引っ張っていってくれてるということもあり、今作の緊迫感も相当のものでありました。

R15と見るとやや詐称気味。なんせ、冒頭から豚の肛門がアップで映り、そこから異物が出てくるわけですからそこだけ見たら『ソドムの市』並の衝撃。エロ要素が少ない分R15指定なのだと思いますが、グロ要素はややR18よりなので注意が必要です。それにしてもヤクザの世界は恐ろしい。落とし前や拷問として何かを削るというのはよくあることのようでして、アレを取るシーンを映してしまうなんて映画多しといえど今作くらいではないでしょうか笑
実際のヤクザ達がどこまで血で血を洗っているのかわかりませんが、変なロマンはありつつも関わりたくない世界でもあります。その分、カタギには迷惑をかけないというのは徹底していて、やはり組長がそれを一番理解している模様。決してただの無法者集団ではないということが窺えます。

ただ、そんな物騒な組織に介入しないといけない警察もまた超多忙であり、『日本で一番悪い奴ら』や『セルピコ』、『トレーニングデイ』などが示す通り、ヤクザやマフィアなどの巨大組織を相手にするには自分もそれなりの覚悟をしないといけないのです。役所広司演じる大上はそれを十分理解した上で、警察という肩書きを持ちながらも大暴れします。尋問でとある男にひたすら暴行を加えるシーンは、本当に警察なのかよと笑ってしまいました。新任の日岡には彼の行動が理解できず、日岡の大上への不信感は膨れ上がっていくのです。大上が日岡に正義とは何なのか?と問うたシーンは印象的でした。結局のところ、自分たちのしていることが正義であると疑わない警察、そしてその警察を操る法を信頼するだけでは真の正義は守りきれないのだというのです。これには唸らせられました。

終始広島弁でしてこれもまた良い。菅原文太をモデルとしたONE PIECEの赤犬も広島弁であるため、広島県民の方には申し訳ないですが、かなりガラの悪いイメージを抱いてしまってます。そんなこといったら、大阪弁も大概ガラが悪いと言われそうですが笑 とにかく面白い。最後まで全く飽きず、そして期待通りのカタルシスを十分に与えてくれます。それなりにきつい描写があるので全ての人にはオススメできませんが、今月のイチオシとしたいと思います。
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