mrかっちゃん

孤狼の血のmrかっちゃんのレビュー・感想・評価

孤狼の血(2018年製作の映画)
4.5
日本映画界において最も注目されている監督白石和彌。
「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」で立て続けに実録物犯罪ドラマを監督。
狂気と泥に塗れた世界を美しく残酷に描き出す。
そして容赦ない暴力表現と皮肉めいたブラックジョークで物語の緩急を自在にコントロールしている。
同名小説を実写化し役所広司、松坂桃李のコンビで暴力団対警察の仁義なき戦いを凄まじい熱量で見せていく。

東映の気合の入れようが分かるとんでもない傑作。
鎖を放たれた獰猛な獣のような演技で圧倒的な存在感を放つ大上こと役所広司。
大上刑事の相棒役として新人の期待のルーキー日岡こと松坂桃李。
広島を代表する暴力団組織五十子会系列の加古村組と尾谷組との抗戦をめぐる話。

大上は捜査のためなら悪魔にでも魂を売るというほど違法捜査や暴力団との癒着、
拷問のような取り調べをする悪徳警官で日岡は彼と反発しながらも心何処かで尊敬していた。

2人の関係性を描いていく中で日岡が文字通り変わる瞬間に大上というキャラクターのインパクトの強さが別の視点から浮き彫りになる。
先輩として恩師としてかれの大き過ぎる存在に影響されて行く。

冒頭の豚小屋での暴行シーンから釘付けになります。
観客を一気に映画の世界へ引きずり込む。
ハッとするような血で血を洗う暴力シーン。
男たちの執念を燃やした熱いドラマに火傷注意。

暴力的な映画は結構観ますが、ヤクザ映画自体は「アウトレイジ」以外見たことがない素人ですが、心を鷲掴みにされました。

白石監督の力量と役所広司の獲物に喰らいつく獣のような凄味と松坂桃李の目の裏に燻る火種が燃える演技で役者としての伸び代が伝わってくる。

今の日本映画に足りない汚れと美しさを纏った一作。
歴史的な作品であることには間違いない。