きゃしー

孤狼の血のきゃしーのレビュー・感想・評価

孤狼の血(2018年製作の映画)
4.0
東映が社運をかけたというだけあって、昨今の邦画と比すれば段違いの熱量。
ただし相当なグロ耐性がないと、とてもじゃないけど観られない。

昭和のヤクザを平成のエンターテイメントに仕上げるうえで、全編を通し、暴対法制定以降の時代の価値観を交えるきらいがある。
だからこそ、あえて形容するなら「昭和のヤクザ映画」より「平成のヤクザ映画」のほうがいい。舞台は昭和で、原作は警察小説なのだけれど。

地下に潜り、日常から遠い存在となったヤクザを平成の観客に届ける最適解が、恐らく、映画オリジナルのエンディング。
完璧なシナリオのはずなのだが、足されたセリフのせいか、その撮り方のせいか、少し嘘っぽい。
嘘っぽい…。本当に?ずっと後になって観直したとき、違う感想を持てるといい。

北野武が人情の機微を描き、東映が本能的な衝動を描くとすれば、
原作における日岡(松坂桃李)の繊細な心情を東映は描ききることができない。
けれども、原作者は東映ヤクザ映画に感化されて本を書き上げたと明言しており、
そうであるならこの実写化までの道筋には非の打ち所がないのだろう。

むごい描写や品の無さ、正直全く好みではない。
それでも面白いと太鼓判を押せるのは、テレビ放映を念頭に置かないコンプライアンス度外視の表現が、綺麗事を描けないからだろう。
原作とはかなり設定を変えているにも関わらず、その世界観を保つどころか存分に膨らませる表現力が圧巻で、忠実な部分とのバランスが絶妙に感じた。

いずれ続編が制作されるであろう作品。
「凶犬の眼」の日岡はどんな刑事になっているのか。とても楽しみ。
きゃしー

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