SatoshiFujiwara

孤狼の血のSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

孤狼の血(2018年製作の映画)
3.7
荒波が打ち寄せて現れるおなじみの△の東映ロゴによるオープニングと縦に現れるクレジットに懐かしいタイポグラフィ、いささか古風なナレーション、潰れた黒と滲んだ輪郭による粗い画面で気分は既にかつての東映実録路線。否が応にも期待は高まるが、冒頭しばらくして出現する竹野内豊演じる極道の風貌はもう誰が見たって『仁義なき戦い 広島死闘篇』で千葉真一が演じる大友ではないか(黒くはないけど笑)。もはやセルフパロディ。

そーなんです、セルフパロディの域を大して出てないんです、というかそう見えてしまう。少しは新味が欲しいけどほとんどないから。また、組同士の抗争をとある事情から手打ちにしたいベテランマル暴刑事の大上(役所広司)の動きもそれぞれの組の内情を描きこんでないから表面的な暴力性のみが目立つ結果となる。ほんでもって極道連中が直情径行過ぎて見たまんまの印象が変わらない。単調。それなりに良い出来栄えで楽しめましたがこちらが期待し過ぎたかも。

本作で1番すげえのは大上の相棒にさせられた若手刑事・日岡(松坂桃李)の終盤での変貌ぶり、特に怒りに任せてチンピラを殴りまくるシーンだろう。あの強烈な暴行は増村保造の『曽根崎心中』とイーストウッドの『許されざる者』に並ぶ。ラストにも痺れます。
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