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孤狼の血のneroのレビュー・感想・評価

孤狼の血(2018年製作の映画)
2.5
原作は知らないが、白石和彌監督で評判も良いみたいなので、公開2週目に劇場へ。まだ結構な入りだった。
平成も終わろうという今、昭和の終わりの広島ヤクザ映画(の顔をした力と正義のあり方を問う警察映画)とはね。東映の執念みたいなものは感じたが、どうにもズレてるなあ・・・。

ヤクザとズブズブの強面マル暴デカ大上と、内部監察の密命を帯びた若きエリート刑事日岡のバディものという構図は面白いのに、いまいち振り切れていない。暴力描写はほとんどアヴァンのみで燃料切れって感じで、後のヴァイオレンス感は正直物足りない。あのテンションのまま突っ走って欲しかった。
『警察じゃけぇ、何してもええんじゃあっ!!』って大上の啖呵はワイルド7の決め台詞並のかっこよさだったが、その割に映像は大人しい。取調室FUCKはちゃんと見せるべきだし、シャブ中ぼんずは歯ぐらいへし折るべき。トイレ殺人も、首にヤッパ突き立てられたら指くらいトバシなよぉ。
暴対法直前の暴発しそうなヤクザ共のヤバさの表現もいまひとつ。ヤクザ抗争劇を警察内部から描き出そうとしているためか、リミッターの外れた”暴力の衝突”というダイナミズムに欠ける印象を受けた。暴力と不可分であるはずのエロス表現も不足している。一方で死体描写は、邦画では珍しい振り切れ方で映像の力を見せていた。

収め方も物足りなかった。大上の失速もやや唐突だったし、”血”の継承はすなわち暴力の肯定にほかならないのだから、日岡が完全にブチ切れた果てまで描くか、裏の権力を手にして更なる悪(=正義)を行使するかのどちらかじゃないのかな。なんかふんわりしたエンディングだった。
いっそ警察内部の権力闘争にフォーカスして、暴力団をコマに使い倒す、”闇・警察代理戦争映画”のほうが良かったんじゃないかとも思ってしまう。右翼の使い方が半端だったのが惜しい。

どうしてもかつての「仁義なき戦い」シリーズと比較してしまうが、もちろんあのアナーキーな戦後闇市時代とは状況もまったく違う。実録ベースではないフィクションであるだけに、ここはイマのリアリティを持った、”新世紀のヤクザ映画”ってやつを見せて欲しかったなあ。
役者はそれぞれ好演しているとは思うし(みんなワル顔似合うねえ)、パワーと勢いは十分感じるが、設定・演出には違和感も多い。大体パロディアイコンならまだしも、昭和63年のヤクザの出で立ちとは思えん、あのアナクロさには苦笑してしまう。広島ヤクザってホントにあんなだったの?
戦争の道具だって、あの頃ならカチコミ掛けるのに、UZIかイングラムくらいのサブマシンガンは使っていても不思議はなかろう。“歌志内のマリー”なんて知ってる人居ないだろうなあ。敵事務所にグレネードでもブチ込んでくれたら派手でいいのに。
とどめに、大仰なナレーションといい、古臭い劇伴といい、昭和のヤクザ映画様式をリスペクトしたいのかもしれんが、そのままなぞっているだけでは、とてもイマの映像表現とは言えないんじゃないの? エンドロールの音楽だけは良かった。

クレジットに「萩尾望都 マージナル」の表記があって、その唐突さに面食らった。薬局のお姉ちゃんが読んでた漫画なのね(笑)