ミヤザキタケル

29歳問題のミヤザキタケルのレビュー・感想・評価

29歳問題(2017年製作の映画)
3.3
29歳問題
5/19公開ですが 一足早くレビュー。
監督 キーレン・パンが13年に渡って演じてきた舞台作品を自ら映画化。

2005年 香港
化粧品会社で働く29歳のクリスティ(クリッシー・チャウ)は、日頃の働きを認められ部長に昇進する。
長年付き合っている彼氏もおり公私共に充実した日々を送ってきたが、仕事の忙しさから彼氏とはすれ違い認知症で昼夜問わず電話をかけてくる父に頭を悩ませていた。
そんなある日、大家の独断でマンションの売却が決まり急遽引越しを余儀なくされるクリスティ。
仮住まいとして紹介されたパリへ旅行中のティンロ(ジョイス・チェン)の部屋に住むことになるのだが、生年月日が同じティンロの“自伝風の日記”に綴られた飾らない生き方に心惹かれていくのであった。
30歳を前に人生の岐路に立つ2人の女性の姿を通し、より良き人生を送るためのヒントを描いた作品だ。

もう迎えた人も、これから迎えようとしている人も、まだ先のこと過ぎてピンとこない人もいるだろう
現在31歳のぼくもまた、29歳の頃にはクリスティのように焦っていた
20代ラストの崖っぷちに立たされたことで、何の成果も出せず何者にもなれず親孝行もできていない現実から目を背けられなくなった

実際誰にも問われちゃいないが、それまでの人生において積み上げてきたモノを問われることになるのが30歳
まだ道の途中ではあるが、ある程度生きてきて自分という人間の器の大きさだって見えてくる
努力の末に何かを成し遂げた者であれば問題無いが、そうで無い者であれば決断を迫られる
今変わらなければ、この先もきっと変われない
その選択次第で、これから迎える30代の生き方が大いに変わっていく。

放っておいても自動的に30代はやってくるし、変わることなく日々も続いていく
だけど、世間の自分を見る目はどんどん変わっていく
他の誰でもない自分の人生
他人の目など本来どうだっていいはずなのに、世間が定めたルールや空気に囚われてしまいがち

30過ぎて人並みに稼げていなければ
30過ぎて叶わぬ夢を追うならば
30過ぎて独身ならば
それ相応の理由を求められる
回答次第では、まるでゴミを見るような目で蔑まれることだってあるだろう
そんな目を向けられたことが、誰かに対して向けたことがあなたにもぼくにもあると思う。

冒頭、完全防備でプロテクトしないと人前に出られないクリスティが描かれる
ありとあらゆる物・者・モノに囚われ、ありのままの自分ではいられない
が、社会的に成功を勝ち取っている
それに反し、完全手抜きで人にどう思われようが気にしないティンロが描かれる
たった1人の理解者がいてくれるから、ありのままの自分で笑っていられる
が、社会的に成功を収めたとは言い難い
相反する2人の人生を目の当たりにして、観客は己の人生とも照らし合わせてしまうはず

多くの者を従える人生と、たった1人理解者がいてくれる人生
一体どちらの方が幸せだろう
人それぞれに答えは違う
人生に明確な答えは無いのだから、違っていて良いと思う
成功者の考えが必ずしも自分に当てはまるとは限らない
支えや助けにはなっても、胸に抱えた問題と対峙するのはいつだって自分自身
己の強い意思こそがモノを言う。

昇進すれば、結婚すれば、子どもができれば幸せなのか
そうじゃない
どれも幸せへ至るための種でしかない
その種を育み開花させることができなければ意味が無い
開花したとしても、枯れてしまう可能性も孕んでいる
種を植え続けるのが人生
水をやり続けるのが人生
他者に種を分け与えることもまた人生

忙しさに追われていると、それらの優先順位を見誤る
親しい者であればある程に分かってくれると過信し、先延ばしにしてしまう
植えることも水やりさえも忘れてしまう
そんな人達との関係性こそ何より大事にすべきなのに、一度枯らさないと花の美しさや尊さに気が付けない。

人は一人でも生きていける
それが悲しみや孤独に満ちたものでも良いのなら
より充実した人生を送りたいのであれば、苦楽を共にできる相手が必要なのだと思う
それが異性でなくとも構わない
気の置けない存在が1人でもいてくれたのなら、絶望することなく生きていける
ツラくて 惨めで やんなっちゃうことはどうしたって付き物だけど、希望は失わずにやっていける

人生の岐路に立ち、追い詰められていくクリスティ
全く同じ時に生まれたティンロの人生を垣間見たことで、己の中に眠る別の可能性を模索する
彼女が一歩踏み出す明確なアクションまで描いていて欲しかったが、それはあなたやぼく自身の人生で実感・体感すべきことなのだろう。

20代の頃に植えた種は次第に芽を出し、30代に差し掛かる頃に一度目の開花を迎える
根っこは腐っていないだろうか
水は足りているだろうか
植える場所を間違ってはいないだろうか

もう通り過ぎてしまった人にとっても
これから先の人生で直面する人にとっても
29歳の彼女達の姿は、今を見つめ直す良い機会を与えてくれると思います
ぜひ劇場でご覧ください。

青春★★★
恋 ★
エロ★
サスペンス★★
ファンタジー★★★
総合評価:B