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29歳問題のakrutmのレビュー・感想・評価

29歳問題(2017年製作の映画)
3.5
30歳を目前にした二人の女性が直面する様々な問題を通じて、アラサー女性の揺れる心情を描いた、キーレン・パンの初監督映画。女優である彼女自身が実際に感じたり経験したりしたことを元に書いた脚本で、一人芝居として2005年から演じ続けている同名の舞台劇を映画化した作品である。なので、2017年公開であるが、映画の中で描かれる時代は2005年となっている。

化粧品会社でPMとして働くキャリアウーマンであるクリスティは、責任ある仕事にプレッシャーも多く、恋人ともうまくいかず、父の認知症も心配で、さらに大家からは退去勧告を受けてしまう。大家が用意してくれた仮住まいは、そこの住人がパリ旅行で不在であるという部屋。そこにあったビデオや日記から、住人が自分と同じ誕生日の女性ティンロで、自分とは全く異なる人生を送っていることを知り、クリスティも自分の将来を真剣に考えるようになる。

クリスティと同じような境遇であるとか、そのような経験をしたことのある女性にとっては、とても共感できる映画であろう。ただし、キーレン・パン監督がこの年齢だったのも一昔前なので、現在のこの年代の女性たちが映画で描かれている女性と同じように感じるのかは、個人的にはよくわからない。実際にどうなのだろうか。映画としては、前半は良かったのだが、後半がやや中途半端なのが気になった。特に、ティンロのストーリーが29歳問題そのものとはあまり関係ない方向に行ってしまったのが、残念。クリスティの将来も中途半端なままだし。

個人的にはよくわからないが、本映画には香港映画や音楽に対する多くのオマージュが含まれているようである。ティンロがパリに憧れるきっかけとなったドラマ『日没のパリ』で主演したレスリー・チャンの歌が映画の最後で流れたりするし、香港の人たちにとっては、ノスタルジーを感じる映画なのかもしれない。クリスティを演じたクリッシー・チャウは一昔前にいわゆるグラビア・アイドルとして一世を風靡した(日本でも写真集が販売されている)女優である。この映画での彼女もアラサーであり、この頃とは異なり、かなり落ち着いた感じの女性を印象的に演じている。一方のティンロを演じているジョイス・チェンは、俳優のアダム・チェンとコメディアンのリディア・サムを両親に持つ女優・歌手である。
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