Inagaquilala

人生はシネマティック!のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

人生はシネマティック!(2016年製作の映画)
3.8
まさかクリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」に便乗したわけではないと思うが、この作品のなかで撮られる映画のタイトルは「ダンケルク」だ。とはいえ、時代と舞台は1940年のロンドン、ちょうどダンケルクの戦いがあった年に撮影された戦意高揚映画にまつわる作品なのだ。

主人公はイギリスの情報省に職を得たばかりの女性カトリン。彼女が言い出したダンケルクでドイツ軍の包囲網から兵士を救い出した双生児姉妹のエピソードをもとに、戦意高揚映画が製作されることになるが、脚本家のバックリーはカトリンも彼のチームに加わるよう差配する。

出向のかたちで映画の脚本家チームに加わることになったカトリンだが、最初は怪訝な感じだったバックリーとも次第に脚本を通して打ち解け、尊敬がいつしか愛情へと変わっていく。クリストファー・ノーランの「ダンケルク」ほど大規模ではないが、ロケにもカトリンは参加し、スタッフたちの信頼も得ていく。

映画に関しては素人同然であった主人公のカトリンが、やがて作品にとっても重要な存在になっていく過程が、恋愛模様も含めて丁寧に描写されていく。観る者にとっても、1940年の映画製作がどのように行われていたかが、カトリンの目を通してたやすくわかるようになっている。

作中には悲しい別れもあるのだが、それらも乗り越えて、一人前の脚本家となっていくカトリンの生き方には少々勇気も得たりする。クリストファー・ノーランの「ダンケルク」のような大掛かりなものではないが、手づくり感たっぷりの映画の現場は、なかなか興味深い。あえてこの時期に同じ「ダンケルク」を舞台にした作品をつくった意味もそのあたりにあるかもしれない。

ただ「人生はシネマティック!」という邦題はややいただけないかも。主人公のカトリンを演じたジェマ・アータートンが、「007 慰めの報酬」で見せたボンドガール役とはひと味違った好演技を見せているのが、素敵だ。
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