LalaーMukuーMerry

人生はシネマティック!のLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

人生はシネマティック!(2016年製作の映画)
4.4
映画制作現場(舞台裏)を舞台にした映画が私は好き。美しい情景を背に名セリフのシーン。「カーット!」、突然の合図にカメラがぐんぐん引いて行って、美しい情景は実は写真だったと気づき、すぐそばにある撮影現場の小道具や大道具、現場を行きかうスタッフたちが次々と画面に入ってきて・・・ 夢の世界から雑然たる現実へのあざやかな転換、この種の映画だけがもつ印象的なシーン。
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印象深かった作品を、感情移入できる主人公目線でかってに分類すると
(1) 俳優目線: 「蒲田行進曲」、「ザ・マジックアワー」
(2) 監督目線: 「カメラを止めるな」
(3) 脚本家目線: 「ラヂオの時間」(映画ではなくラジオドラマ制作ですが)
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この映画は、(3)に分類される舞台裏作品で、大変面白うございました。1940年、ドイツと交戦中のイギリスという設定も興味深い。ナチスの空襲にさらされていた国民を鼓舞するためにと、国(情報省映画局)から何かと横やりが入る制作現場。(これってまちがいなく戦後の日本国憲法で禁止された「検閲」だよね。それでも「信ぴょう性」を重視したところが民主国家イギリスというべきか? プロパガンダとそうでないものの線引きはどこなのだろう?)
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ダンケルクの撤退を題材に、女性が主人公の映画を作ることになり、新人の女性脚本家カトリン(=シェマ・アータートン)が抜擢され、男性脚本家バックリー(サム・クラフリン)と組んで、現地取材からの脚本づくりがスタートするのだが・・・
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撮影が始まる前から当局の横やりが次々と入る。ストーリーが事実と違うとごねるかと思えば、アメリカにとりいるようにアメリカ人の役を加えろと勝手なことを言ってくる(ここは事実と違ってもかまわないの?)。ベテラン俳優はセリフをかえろと言ってくる。鳴り物入りで加えたアメリカ人俳優が実はクソ大根役者で撮影が全く進まない、ベテラン役者に演技指導をするよう頼むが、それはムリと断られ、あなたのシーンのセリフをもっと感動的なものに変えるから演技指導をしてあげて・・・。現場で無理な要求が発生するたびに脚本家は知恵を絞って台本を修正していく・・・制作現場あるあるの数々・・・
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原題は「Their Finest」 いろいろな立場の人の要求を全て取り入れたのだから、誇りをもって最上級のfineな作品だと感じているということでしょう。脚本家がシナリオを組み立てて行く過程がテンポよく描かれているのが新鮮でした。脚本家ってすごい!
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脚本家二人の関係性が、上司と部下から、仲間、そして恋人へと変わっていくのもいい。プロポーズシーンのシナリオ書き換えが現実とシンクロしていくくだりは、脚本家ならではの味のある演出でした。
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映画愛に溢れた良作に出会えてよかった。