MasaichiYaguchi

はじまりのボーイミーツガールのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.8
名作「小さな恋のメロディ」を彷彿させるような本作を観ていると、遥か昔となってしまった子供時代や、今ではすっかり大人になってしまった子供たちの幼い頃を振り返りたくなる。
本作の主人公で12歳の少年ヴィクトールは、「小さな恋のメロディ」のダニエルのように気が弱く、おまけに学業がふるわない落ちこぼれで冴えない日々を送っていたが、ある切っ掛けで憧れのクラスメイトのマリーに声を掛けられて交流が始まる。
そのマリーは「小さな恋のメロディ」のメロディのような女の子だが、人には言えない秘密を抱えている。
そして2人は「小さな恋のメロディ」と同様に一つの望みがあって、それはマリーのチェリストになりたいという夢を叶えるということ。
勉強や音楽を通して距離を縮めていく2人だったが、ヴィクトールがマリーの秘密を守る為に利用されていたことに気付いてしまう。
それでも2人は嘘や隠し立てによる諍いや感情の縺れを乗り越え、もう一度夫々を見詰め直していく。
ローティーンのボーイミーツガール物と言えばそれまでだが、本作が“おままごと”のように感じられないのは、ヴィクトールもマリーも“痛み”と言っていいような悲しみを抱えているから。
ヴィクトールは幼い頃に母親を失い、彼もその父親も愛する人の面影を未だに引き摺っている。
そしてマリーも“爆弾”のような秘密を小さい頃から抱えていて、彼女の父親の無理解もあって、チェリストになりたいという夢が風前の灯火にある。
そんな2人をヴィクトールの個性豊かな友達たちが温かく応援する。
そして心無いクラスメイトの行動で、マリーの秘密が暴かれて夢が断たれようとした時、ヴィクトールたちは「小さな恋のメロディ」の子供たちのように大人たちを慌てさせるような事を仕出かす。
少年少女の純な思いがユーモアやエスプリを交えて描かれる本作は、我々が遠い昔に置き去りにしてしまったものを思い出させてくれる。
マリーはラストで“あるもの”を失うが、それを補って余りあるものに満たされていることに気付く。
その彼女の表情と演奏がいつまでも心に残ります。