ごてふ

ジャコメッティ 最後の肖像のごてふのレビュー・感想・評価

3.6
日比谷シャンテ・シネにて。都下単館上映の英国映画には上品な紳士淑女で3割程度の入り。半世紀前に没した彫刻・画家の名前と代表作くらいは知っているが予備知識はない。晩年に自画像モデルとなった作家との18日間が描かれる。ほぼ全編アトリエが舞台の室内劇。その声価が高まって作品は高額で取引されても雑然たる工房で苦悩する主人公。好色で気まぐれ、ズボラだがチャーミング。しかし対象(モデル)に対する鋭い観察力、哲学的な洞察力は感じられる。こうした複雑な性格を熱演した名優ジェフリー・ラッシュの成り切り振りに尽きる。試行錯誤の末に終盤で映し出されたその自画像は、平面なキャンパスから立体的とも云える人物が浮かび上がっていた。妻・愛人・実弟・画商など登場人物は少ないが、各々濃密な関係が丁寧に描かれ上質な作品でありました。
ごてふ

ごてふ