きぬきぬ

ジャコメッティ 最後の肖像のきぬきぬのレビュー・感想・評価

3.6
完璧さを求める芸術家に満足や完成品なんて無いのかもしれない。

ジャコメッティ(ジェフリー・ラッシュ)の気まぐれや作品への追及に翻弄される、交友もありジャコメッティの芸術に魅せられているが為にモデルとなった肖像画が完成するまで帰れないライター、ロードのアーミー・ハマーさんがとにかく可愛くおかしい♪
ジャコメッティの作品の一部となることは喜びだろうけど、何度も描き変えられ、モデルとなったロードはいつまでもNYへ帰れない。パリのアトリエでジャコメッティの私生活をも垣間見るけど、ゲイのロードはジャコメッティの妻や愛人とあやしい関係になることもなく、観察者であり傍観者の距離で有り続ける。芸術家と付き合うこの距離感も良い。

それでも完成の見えなさに茫然とする、常に礼儀正しく穏やかなロードのアーミー・ハマーさんの戸惑ったり困ったり、実はうんざりしてるだろうなあ、のささいな仕草や表情が可愛い♪ 芸術家にしても何にしても、芸術家の‘作品’を待ち望むファンは辛いよって感じで観てた。

1960年代のパリが舞台で、風景といいジャコメッティのアトリエといいジェームズ・メリフイールドの美術がほんと美しいし、冒頭少し揺れるカメラは苦手だったけどダニー・コーエンの色調を抑えた撮影も良い。
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