ばーどイヌサンローラン

ジャコメッティ 最後の肖像のばーどイヌサンローランのレビュー・感想・評価

3.0
🐾ちょこっとあらすじ

1964年、アルベルト・ジャコメッティ(ジェフリー・ラッシュ)の個展が開かれているパリ。ジャコメッティから肖像画のモデルを依頼された友人で作家のジェイムズ・ロード(アーミー・ハマー)はアメリカに帰国寸前だったが、彼の「2日で描き上げる」との言葉を信じて承諾する。ロードはイポリット=マンドロン通り46番地にあるアトリエへ向かいながら、作家として巨匠の仕事を間近で見られるチャンスと張り切っていた。当時すでに名声を得ていたジャコメッティだが、狭く汚く古びた自宅兼アトリエで、妻のアネット(シルヴィー・テステュー)と右腕的存在の弟ディエゴ(トニー・シャルーブ)の3人で暮らしていた。ジャコメッティはロードの顔の角度を微妙に調整し、「肖像画とは決して完成しないものだ」と不吉な言葉を発しながら描き始める。モデル1日目が終了するが、完成には程遠い。そこへ、ジャコメッティのミューズ的存在の娼婦カロリーヌ(クレマンス・ポエジー)が現われる。アトリエの外で悲しそうに見つめるアネットの前で、2人は3年間も堂々と不倫していた。2日目、3日目と筆は進まない。4日目、ジャコメッティは「明日は本格的に始める」と上機嫌だが、突然現れたカロリーヌに邪魔されて終了する。アトリエの外では、ジャコメッティの親友、矢内原伊作とアネットがお楽しみ中だった。5日目、カロリーヌが行方不明になり、ジャコメッティは癇癪を起こす。数日後、カロリーヌが戻ると作業は再開される。帰国の延長でロードは恋人に愛想を尽かされるが、創作の合間に聞くピカソの裏話や、ジャコメッティとの貴重な時間は何物にも代え難かった。14日目、完成間近の肖像画を太い筆で消したジャコメッティは、「希望が最高潮になると、私は投げ出すんだ」と笑う。それから3日間、ジャコメッティは描き、叫び、消す。ロードは恋人の待つニューヨークに帰れるのだろうか……?(movie walkerより)



🐾感想

作品の彫刻同様、ちょっとコミカルでクスっとする場合もあったりして、ジャコメッティのことを知ってる人も知らない人も作品として楽しめると思います。特にグレーで塗り潰されるのを阻止する場面とか…


『肖像画とは決して完成しないものだ』


うん、肖像画でなくても、引き際が分からず、どんどん描き加えたくなる。そしてどんどんダメになる。わたし、だ。


ジャコメッティはその人の内側を描こうとしている。内面は日々、異なる。だから完成しないのか?!はたまたジャコメッティの気分によって見え方が違うのだろうか?!いやいや虚飾を取り去った本質だけを執拗に追い求めた?!


兎に角、肖像画はいつになっても完成しない。


当初、2日で終わるハズの肖像画の依頼が3日になり、4日になり…、結局18日にも及んでしまった。




肖像画の依頼を受けてから完成するまでの18日間の地獄のセッション。やっと完成かと思った、次の瞬間にグレーで塗り潰してしまう。



『希望が最高潮になると、私は投げ出すんだ』



うーん、わかるな。わたしごとき庶民に分かられたくないと思うが、わたしもいい感じになると投げたしたくなる。終わらせたくなるのだ。怖いんだろうな…



『成功が不安を煽るのだ』


終わらせたくなるって気持ちもあるけど、永遠に終わらせたくない、って気持ちもある。どっちやねん、ってことになっちゃうんだけど、常に、成功の先は、更なる成功を求められる、失敗は出来ないなんて不安以外なにものでもないだろう。だからこの中途半端な状態がずっとつづくことを望むんだろうな、わたしは…



芸術家とは、なんで、こんな我儘で、自分勝手で、ひとの迷惑を考えないんだろう?思ったことをそのまま口に出すし、そして偏屈で天邪鬼だ。



我慢をしないってことは、言い換えれば、自分の気持ちに正直でピュアってこと?


それは一般大衆に迎合しないから、他人には真似の出来ないモノができるのか?!


うーん、一般社会ぢゃ、絶対通用しないよな、って…。でも才能があってよかった。てか、わたしなんて一般社会でも通用しないし、特別、抜きん出てる才能もないし、どーすんだよ、って(笑



こんな我儘放題で偏屈オヤジのジャコメッティ を演じるのは『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズなどでお馴染みのカメレオン俳優のジェフリー・ラッシュ。『シャイン』でも実在のピアニストを演じ『クイルズ』ではマルキ・ド・サドを演じ『英国王のスピーチ』でも実在の人物を『鑑定士と顔のない依頼人』でも癖のある役どころだったしね。次々と面白い役どころを演じている。ホント、カメレオンだ。





そして、モデル役を務めたのは、いかにもモデルを頼みたくなるような彫刻のように美しいアーミー・ハマー。『フリー・ファイヤー』や、続篇が楽しみな『コードネームU.N.C.L.E』『ローン・レンジャー』などのアクション作品のイメージが強いけど、こういう役もいいよね、てか、彼の造形美をしてなし得た作品?


一番の見どころはジェフリー・ラッシュのジャコメッティになりきりの怪演と、Mのように耐えてるアーミー・ハマーの表情。





たった18日間だったけど、ジャコメッティが偏屈なクソオヤジだってことがわかったし、でも見方によってはコミカルで、憎めないから、画面いっぱいに広がるふたりをずっと観ていたかったな。どこまでも…


そんななんか余韻が心地よい作品でした。





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