ジャコメッティ 最後の肖像の作品情報・感想・評価

ジャコメッティ 最後の肖像2017年製作の映画)

Final Portrait

上映日:2018年01月05日

製作国:

上映時間:90分

3.4

あらすじ

パリ、1964年。 アルベルト・ジャコメッティ(ジェフリー・ラッシュ)の個展が開かれている。友人で作家のジェイムズ・ロード(アーミー・ハマー)は肖像画のモデルを依頼される。アメリカに帰国寸前だったロードは、彼の「2日で描き上げる」との言葉を信じて、イポリット=マンドロン通り46番地にあるアトリエへ向かった。作家であるロードにとって、巨匠の仕事を間近で見られるチャンスと張り切るが、18日にも及ぶ地…

パリ、1964年。 アルベルト・ジャコメッティ(ジェフリー・ラッシュ)の個展が開かれている。友人で作家のジェイムズ・ロード(アーミー・ハマー)は肖像画のモデルを依頼される。アメリカに帰国寸前だったロードは、彼の「2日で描き上げる」との言葉を信じて、イポリット=マンドロン通り46番地にあるアトリエへ向かった。作家であるロードにとって、巨匠の仕事を間近で見られるチャンスと張り切るが、18日にも及ぶ地獄のセッションになるとは予想もしていなかった。 当時すでに名声を得ていたジャコメッティだが、自宅兼アトリエは狭く汚く古びており、そこに妻のアネット(シルヴィー・テステュー)と右腕的存在の弟ディエゴ(トニー・シャルーブ)の3人で暮らしている。アトリエに乱雑に置かれた未完成の作品の数々に圧倒されるロードの心中なぞ気にも留めず、ジャコメッティは真っ白なカンバスをイーゼルに立てかけた。ロードの顔の角度を微妙に調整し、パレットに絵の具を出し、たばこをくわえながら描き始める。「肖像画とは決して完成しないものだ」と不吉な言葉を発しながら……。

「ジャコメッティ 最後の肖像」に投稿された感想・評価

作る人というのは、やはり狂っていないと駄目なのだ。個人的に、とても刺さる台詞に出合えて嬉しかったし、「それでいいのだ」と背中を押してもらえた気がした作品。

ジャコメッティの作品に初めて出合ったのは、結構昔だ。中学生とか高校生の時に、母に教えてもらった。あの異常に細長い人たちは妙に物哀しくて、とても印象に残った。

でも不思議と、彼がどういう人だったのかはこれまで知らずに過ごしてきた。
例えばピカソなら彼のキャラクターはいろんなところで目にできるし、モネ、ゴッホ、ゴーギャン、ポロック、モディリアーニ等は優れた映画化作品も多数あるから、それらの作品を通して人となりをつかめてきたと思う。

この作品を知ったのは、元々キノフィルムズのラインナップ発表だった。
キノは良い作品を多数手がけていて、個人的に今熱いレーベル。最近だと「ハクソー・リッジ」「パディントン」「パトリオット・デイ」あたり。面白い洋画をたくさん配給してくれるところだ。

そこで知って、自分で調べて、ジェフリー・ラッシュとアーミー・ハマーじゃないか! ジェフリーがジャコメッティやるのか!と興味が湧いた。そういう流れで本作に出合った。
だから、ジャコメッティ本人のことが知りたくて本作に行き着いた訳ではないのだ。僕の中ではキノフィルムズが手がけるんなら面白いだろう、という信頼があって、キャストを見てあらすじを読んで予告を見て、という流れで作品に近づいていった。

そして、見た。
話の構造としてはかなりシンプルだ。どこか演劇的でもある。時間は逆行せず、淡々と進んでいく。フラッシュバックもない。モノローグもほぼなかったように思う。ジャコメッティの絵のモデルになった作家が奔放な彼に振り回される、言ってみればそれだけだ。ある意味、とても手堅い。

観客は椅子に固定されて、淡々と続く作品を見る。一緒になって笑うとか泣くとか、そういう役割はいらない。ただ、ジャコメッティその人を観察するだけ。感覚的には、美術館や博物館、資料館なんかのライブラリにある記録映像を見る時みたいな。みんな無言でじっと見る、あの感じだ。映像で語られる情報を得る、そのことに観客が注力するというか。

ただ、この作品においては、多分ものを作る人とそうでない人で、受け取り方が変わる。

これは区別とか差別とかではなく、ものを作る人というのは他者とどこかズレている。僕はそれがある種授かりものだと考えていて、自分に才能があるかはわからないけど、ものを書く仕事に就けたのはこの「異常性」があったからだと思っている。
例えば何かに対する異常なこだわり、目の付け所、そういった部分、協調性や社会性と引き換えにして得たある種の「才能」。

自分が高い能力を有しているとは思えないけど、本作でとても嬉しかったのは、「おかしくていいんだ」と言ってもらえたこと。そして自分もあっち側だと思えて、すごくほっとして勇気をもらえた。

劇中のセリフで、「アイツは異常な時こそ正常だ」的なものがある。ジャコメッティの弟が言うセリフだ。
ジャコメッティは「死にたい」みたいなことをよく言うし、「こんなんじゃ駄目だ!」って周りを振り回す。自分の中の「美意識」ってやつが彼自身を振り回して、納得できないのだ。

あぁ、わかる……と思った。
才能があるにしろないにしろ、感性と美意識は誰しもに備わっていて、ものを作る人はそれが異常に高い。高いというか、おかしい。普通の人であれば納得したり受け入れたりすることが、できない。そのせいで周りからは煙たがられたりする。

自分も、よく「なんでそんなにこだわるの?」と言われる。社会に出て、受け入れて折り合いをつけることが必要なスキルだと学んだけど、それは仕事を円滑に進めるための「型」として大事だというのはわかったけど、本音を言えばずっと窮屈だ。もっといいものを作りたい、それをみんなに見せたい。その欲望は、なかなか簡単に収まるものじゃない。

だから、ジャコメッティに対して僕は共感するところがすごく多かった。そしてそれは、自分がまだ、社会に歯車の1つとされながらも、大切なものを失ってないってことなのかなって思えて、それは本作からもらえた救いの1つだと思う。

作り手であることの功罪をしっかり描いてくれた作品だった。
TOHOシャンテ 2018/1/18
金には無頓着に見えて札束で人の頬を叩く方法を知っている辺りだとか。

着地点が見えてないように思わせといてしっかり折り合いはつける辺りだとか。

食えないおっさんだなぁこの人、という感想は持ちましたけれども。

しかし映画としては面白がり方がさっぱり分からん。
TOHOシャンテで観たが、映画も客層もシャンテ感抜群だった(Bunkamuraとかでもかかってそうな雰囲気だけど)。
映画そのものは、ジェフリー・ラッシュの怪演をただひたすら愛でるべき内容で、それ以外に特筆すべきものはなかったかのように思う。ジャコメッティに詳しければ「いや、あんなひとではなかったんじゃないか」「想像通りのジャコメッティだった」とかうだうだ言えたのかもしれないが、美術にうとい自分にはその辺りもよくわからず。
本当に地味な映画で、偏屈だけど実は温かい人みたいな定番の落としどころを用意するわけでもなく、ドラマチックなフィクションを加えるわけでもなく、ただひたすら偏屈なジジイとそれに振り回されるお兄さん、という構図をくずさなかったことについては好感が持てる。
どうでもいいけどジジイになっても女にモテるというのは本当に羨ましい。
murph

murphの感想・評価

3.0
アミハマちゃんの美人度ド迫力
才能に惚れるって厄介だなぁ



2018映画記録
zocchi7

zocchi7の感想・評価

4.5
ジェフリーラッシュが見たくて。
創作には目的も意味もなくてただ衝動だけがあるんだすね。
「描きすぎた。同時に描き足りない」という言葉を口にするジャコメッティというかジェフリーラッシュの表情に、永遠に辿り着かないゴールに向かってもがき続ける作家の葛藤も苦悩も喜びも諦めも純粋さも全部詰まっててキュウとしました。
淡々とした映画だけど、ジャコメッティの目で世界を見てみたいという思いで苛つきつつも離れられないジェイムスと同じ気持ちで静かに興奮。ジェフリーラッシュはほんと名優だ。
葉月

葉月の感想・評価

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2018.01.20
伏見で、両親とまるけいでご飯の前に
地元のミニシアターで鑑賞。高校生の頃ジャコメッティの作品を見て衝撃を受け、その後パリのポンピドゥーセンターで実物を見て涙した思い出。思い入れのある作家なのでひいき目な感想です。

ジャコメッティは映像もかなり残っているので、色々参考にしやすかったとは思う…けど、それにしても、ジェフリーラッシュのジャコメッティぶりが恐ろしい!よくわからないけどジャコメッティよりもジャコメッティに見えるほど。自分の見て来たジャコメッティの映像が更新されるほどに。あの猫背やボソっとした振舞い、神経質な筆使い。最初のジェフリーのカットにゾっとした。

いわゆる身勝手で神経質な作家を描く映画系には若かりし頃から晩年までを作品を交えて描くようなものが多い中、彫刻ではなく肖像画を描く数日間だけにフォーカスしたのも面白かった。もっと彫刻を作っている所を見せてよ!とはまったく思わなかったのが不思議。伝記映画という感じがしないのが好き。あの美しく再現された色のないアトリエの中で、モデルと作家の神経質な時間を一緒に、映画を観ている人も神経質になりながら過ごす。頼むから上手く進んでくれ…と固唾を飲んで見守っている感覚。退屈した人もたくさん居るとは思うけど、私はこの描いては消し、描いては消しという映像をずっと観ていられるなと思うくらいだったので、肖像画は完成して欲しい様な欲しく無い様な…そしてあれは完成ではなかったんだろうな。

彼の最期を描かなかったのも良かった。あの肖像画もジャコメッティの人生も、完成されなかったような事を想像させてくれて、心地よい終わり方だった。芸術家の人生全てを描くのではなくて、一片をていねいに描く方が伝わることがある。

なぜこれをスタンリー・トゥッチが監督したんだろう?と思ったけど、両親が美術教師だったそうな。彼が監督した他の芸術家を題材にした映画を観てみたい。
最高の時間の楽しみ方を偉大な天才に教えてもらえる映画です。
最初は完璧主義者所以、肖像画が完成しないのかと思って観ていましたが、恐れくそれが誤りであることに最後の最後で気づかされます。
完成させないことを楽しんでいたんでしょうね。
肖像画モデルのアメリカ人青年のジェームズとの時間を慈しみ、楽しみ、彼の誠実さに甘えながら、出口のない迷宮を彷徨うこと自体を楽しんでいたのだと思います。
そう思って全編を振り返るとジャコメッティが最高に愉快なおじさんに思えてきて、笑いが収まらなくなります。
良い映画です。凡人にはまねできない人生の楽しき方の御裾分けを頂けます。
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