カタパルトスープレックス

大和(カリフォルニア)のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

大和(カリフォルニア)(2016年製作の映画)
2.4
宮崎大祐監督の長編二作目。厚木基地がある大和市を舞台とした青春劇です。色々とつまみ食いをしたため、テーマが少し見えにくい作品となっているのが残念です。

テーマはアメリカと日本と取ることもできます。それはタイトルである『大和(カリフォルニア)』にも表れていますよね。批判的と言うより、ただそこにある違和感のようなもの。もう一つのテーマが子供から大人に成長するモラトリアムなんでしょうか。ただ、二つともまあまあ使い古されたテーマでもあります。

主人公はラッパーになりたいけど自分にはその実力がないとも思っている長嶋サクラ(韓英恵)。表現できない自分を隠すために虚勢を張って周りと軋轢だけを作り上げていきます。そこにアメリカから旅行でやってくるレイ・ゴールドマン(遠藤新菜)。レイの父親はサクラの母親の恋人でもある。内向きなサクラ、人懐っこくサクラに絡んでいくレイ。二人の距離は徐々に縮んで行きますが……と言う話です。

韓英恵の演技は素晴らしいと思うんです。しかし、韓英恵が演じる長嶋サクラがどうしたいのかがよく分からない。自分自身が分からないからイラついてるのかもしれない。ただ、それってどうなんだろ。よくあるパターンじゃないですか?最後に何かアイデンティティーを獲得できたか?むー、できてなかろう。ラップというよりポエトリーリーディング。

レイのキャラクターがとても良かったのに、使いきれなかったのも残念。レイが登場してからストーリーが一気に進んだし、パッと明るくなりましたからね。それが最後に失速した印象。

前作『夜が終わる場所』(2011年)は正直にいえば期待外れでした。黒沢清臭が強すぎて、個人的に好きじゃなかった。本作は黒沢清臭が若干和らいでいます。宮崎大祐監督の個性っぽいものが出てるのかなあ。次作に期待です。