ひとりの時は言葉がでてくるのに、他人がいると口下手で、兄からもボキャ貧をなじられる。
そしていざ会話をしようとすると、米軍機の爆音が遮る。
彼女が人前での歌を取り戻すのは、野宿者が奏でる爆音のメロディの中。この対比!生命と生活、アートとしての音楽の爆音が、軍事的爆音から言葉と歌を奪還しようとする。
さらに登場人物たちにステレオタイプな日本人がいないのもすごい。鰻屋の主人でさえ、越境した親類の記憶がある。
同時に、人々はナショナリティを背負わされるがゆえに、日本人とアメリカ人とそのミックスであることにアイデンティティを見出そうとして失敗していく。(この失敗も見事!)
そして「大和」という名称と、その場所が米軍基地のバックヤードとしてあること。
ただ残念なのは、最初のゴミの山と、廃墟の演奏シーン以外で、印象的な画面がなかった。もっとできたはず。