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乱世備忘 僕らの雨傘運動のmayaのレビュー・感想・評価

乱世備忘 僕らの雨傘運動(2016年製作の映画)
4.0
日本・香港インディペンデント映画祭2017にて。2014年の9月〜12月に香港で起きた若者達による雨傘革命のデモにスポットを当てたドキュメンタリー。これをこの機会で観る事ができて本当に良かった。香港返還時の「一国二制度」を植え付けられて育った世代が、自由な立候補を阻止(共産党の意向に反する民主派の出馬を拒否)する中国政府に反発。学生が中心となって中環地区を占拠し、そのデモは徐々に拡大して行く。監督のチャン・ジーウンはデモの前線に立ち、時には警察官からの暴力を受けながらも若者達の声を聞き続ける。香港人としてのアイデンティティ意識を強く持った人々によるその活動は、実に若者らしい、斬新な方法で行われていた。ただ占拠するだけではなく、学業と並行して参加する学生のための自習室や路上での英会話講義だったり、アーティスティックなオブジェの作成だったり… 一部目的を見失いそうな方向で展開しているかのように見えたデモだったが、参加者の目的意識ははっきりしており、確固たるリーダーがいるわけではないが皆が同じ方向を向いている。香港人としての尊厳を保ち、香港の未来のために行政府へ立ち向かう彼らの意思の強さは並々ならぬもので、そこの部分には衝撃を覚えた。作品中で登場する16歳の少女の「逮捕される覚悟はできている。自分が間違ったことをしているとは思わない」という台詞(曖昧な記憶)にもそれがよく現れ出ていたように思う。

デモの弾圧のために胡椒や催涙スプレーを吹きかけ、一部では市民へ暴力を振るう警察に対し、「あなたも香港人でしょ!」と悲痛な叫びを上げる若者の姿が目に焼き付いている。でも真の矛先は警察はない。警察官達は傀儡であり、戦うべき相手は行政府だった。民主派の若者達と行政府による対話は実現するが、デモが行政府を動かす事はできないまま、占拠活動は終息する。作品中で撮られているのはここまでだが、占拠活動が終わっても思いを貫き通そうとする若者達の発言や眼差しは忘れ難いものだった。

行政長官選挙が行われたのは雨傘革命から3年後の今年の3月。民主との融和を訴えていた曾氏ではなく、雨傘革命時に学生たちの民主化要求を拒否した親中派の林鄭氏が当選。雨傘に参加していた当時の学生達は何を思うのか… 作品中で出てきた女子学生の「鳥籠の中から出られない」という台詞(これも記憶曖昧)を聞いてやりきれない思いがあるけど、悲観だけしてる訳にもいかないんだろうな。混沌とする香港の一時期を備忘録としてこの作品が残ることに大きな意味があると感じた。