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乱世備忘 僕らの雨傘運動のditaのレビュー・感想・評価

乱世備忘 僕らの雨傘運動(2016年製作の映画)
3.5
@シアターセブン   

ドキュメンタリーは、ことばは良くないけれどお手軽に世の中が知れる教材だと思って鑑賞することが多い。もちろん100%信頼しすぎないように心掛けているし、そこから自分がどう思いどう動くかが伴って初めて作品を観た意味があると思う。でも、まずは知らないと何も考えられない。この作品はいわば『タクシー運転手』のソン・ガンホの目線で、今の香港を知ることが出来る。外からしか知らなかったことを中から映し出すことによって、ニュースには映らないたくさんの「人間」がそこにいたことを知った。

普通選挙を求める若者たち、デモに反対する親世代、排除する警官の立場、主張はどこまでも一方通行だ。それぞれの立場に立った時には、その方法は間違っていなくて、他方から見るとその方法は間違っているということになる。彼らはそれを自覚しているし、デモで全てを解決できるとは思っていないのだろう。たとえそうであったとしても、今は変わらないかもしれない、でも次世代には同じことをさせたくないと願う英雄ではない普通の若者たちの備忘録がこのように映像として残された意義は大きいと思う。

思想や政治という大きなくくりで考えがちだけれど、やはりそれは「人」がおこなうことなんだと改めて思った。人がおこなうからこそ、「参加してほしくない」という家族の思いも痛切に感じた。革命と命、どちらを大事にすべきなのか、わたしにはやっぱり答えが出ない。ただ、民主主義国に生きるものとして、選挙には必ず行こうと改めて思った。

今回の香港の大規模デモの一報が入ってすぐに、関西では二つの劇場でこの映画の上映と再上映が決まった。いち映画ファンとして、大好きな劇場の伝えたいという真摯な思いをこれからも受け取っていきたい。
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