「セッション」や「ララランド」などこれまでの作品では"音楽"を中心に扱ってきた彼だが、なんと本作で描いたのはアポロ11号で初の月面着陸を果たした宇宙飛行士ニール•アームストロングの伝記作品だ！
「いや、方向転換が急すぎないか！」と思ったけれど、なんだかんだで物語の根底にあるテーマは前2作と変わっていないような気がする。
アメリカとソ連の宇宙開発競争は激化の一途を辿り、月面着陸を成し遂げることで明白な勝利を勝ち取ろうとアメリカ政府は開発のために税金を注ぎ込みまくる！
国民からの批判の声、同僚たちの死、家族からの恐怖と不安に満ちた視線、のしかかる重圧と葛藤、それでも男は宇宙を目指す。
16ミリフィルムとIMAXフォーマットで撮影された本作はまるで一緒にロケットに乗っているかのような臨場感や迫力はあるものの、どちらかといえばドキュメンタリーに近いものがあり地味で退屈な印象すら覚えてしまう。
しかし、ファミコン以下ともいわれる当時の技術で月を目指すというキチガイプロジェクトに挑む者たちの姿から感じられるのは"常人には到底理解できない遥かなる高みへ挑む人間の狂気にも近い執念と情熱"であり、それは「セッション」や「ララランド」で描かれていたテーマと通ずるものがある。
軽快なノリや感動の展開はなしの、カタルシスとは無縁なただひたすらにリアルな宇宙飛行。私の好みなタッチではなかったけれど、こんなアプローチがあったのかと深く唸らされました。
