つかれぐま

ファースト・マンのつかれぐまのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
2.0
19.2.8@大泉#2

観客も酔う皮肉な結果

飛行機の離着陸時、機体の軋む音と揺れに「人類は随分と無茶をしているんだなあ」という感覚を覚えるが、その究極を体感できる作品だ。まーよくもこれだけアナログな手作り機材で月まで行ったもんだ(ゆえに多大な犠牲があったのだが)という事実と、それを忠実に再現した本作に感服することひとしきり。

だがこの作品、果たしてデミアンチャゼルが作る意味があったのだろうか?
私は「セッション」が人生ベスト級に好きで、「ララランド」も忘れ難い。両作ともに、監督の頭の中で完全に統御された秒単位の緻密な作りが魅力だった。 一方で本作は即興撮影を思わせるドキュメンタリー的な仕上がり、これまでのチャゼル作品とはむしろ真逆だ。スピルバーグの「ペンタゴンペーパーズ」みたいに作りたかったのだろうなと思っていたら、エンドロールになんと彼の名が(as製作総指揮)。

顔のアップと意図的なブレの多いカメラワークがあまり好きになれなかった。これはニールの主観映像にこだわった結果だと思うが、効果的とは思わない上に(IMAXでなくても)私は初めて映画で酔った。いくら演出とは言え、観客の生理を侵してもいい道理はない。
同様の撮影意図を感じた「アリースター誕生」はここが良く出来ていたと思う。因みにアリーは撮影賞ノミネート、本作は落選なので納得。

オープニングの迫力と緊張感は流石。ただこのシーンが名作「ライトスタッフ」の世界観にとても近く、皮肉にもあの作品の「カラっとした男臭い魅力」を期待してしまった。後に展開される本作の微妙に湿った空気感。これ自体は悪くないのだが、結果的に生じた期待との落差が残念だった。

ニールの中の「成功」と「家族」への思い、そのバランスが終始ぼやけていて感情移入できなかった。前2作は此処の決着を見事につけていたが、今回は好きな着地ではなかった。