未島夏

ファースト・マンの未島夏のレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
3.9
恐怖体験の総称としてホラーという言い回しをしていいなら、この映画は今まで観て来た映画の中でも屈指のホラーだ。

宇宙船内からの視点に絞られ、いや縛られ目の当たりにする壮絶極まった閉塞、孤独、緊迫、絶望のサイクル。
月面着陸が物語の到達点だと理解しながらも、観ているだけの自分が「また飛ぶのか、もう行きたくないな」と疲弊してしまう程だった。

この映画体験が天国か地獄か、その両方なのかは観る人それぞれだろうが、少なくとも閉所恐怖症の方には拷問なので冗談でなく鑑賞を控える事。
そうでなければ、一度は最高の環境で味わった方が良い。例え地獄でも。

娘や沢山の同志を亡くした心の空洞を埋める月への狂気は、ようやくその地に降り立つ彼へ何を見せるか。
月から俯瞰する地球がそれを物語るカタルシスは、月面着陸の感慨と共に静寂の中押し寄せる。
出発前に月へと経つ事を告げる息子達との意思疎通にも涙が。

この映画の「天国と地獄」は、実はラストカットにも存在している。
そのカットの解釈と、あの月から俯瞰した地球が重なって浮かぶ愛の輪郭を見届けてほしい。
未島夏

未島夏