ひろ

ファースト・マンのひろのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
3.8
ジェームズ・R・ハンセンによるニール・アームストロングの伝記を原作として、監督デイミアン・チャゼル、脚本ジョシュ・シンガーで製作された2018年のアメリカ映画

教科書にも載っている誰もが知っている偉業を成し遂げた人物。月面を最初に歩いた宇宙飛行士ニール・アームストロングを中心としたNASAのミッションを描いた作品。アポロ計画の前身のジュミニ計画からアポロ号の月面着陸まで事実に基づいて描かれている

寡黙で真面目なニールは謙虚なヒーロー。そんな多くを語らなかったニール・アームストロングの人物像をクローズアップしているのは新しい。「セッション」や「ララランド」で天才的な才能を発揮してきた若き映画監督デイミアン・チャゼル。音楽映画で成功してきた彼が伝記映画という全く別ジャンルに挑んだ。それだけで観る価値がある

心配する家族、奇跡の生還、ド派手な音楽からの感動の再会。それがステレオタイプの宇宙映画だが、そこはチャゼル監督。家族と宇宙飛行士も描いているし、展開的にもそのままにも関わらず、ステレオタイプとは違った印象を受ける。彼の独特の視点。本来ならクライマックスになりそうな星条旗を建てるシーンを使わないところとか、普通の人とは見えている世界が違う。チャゼル監督はあくまでニール・アームストロングという人物を描くのに力を入れている。アメリカ様様の映画になんかしない

英雄ニールを演じたのは「ララランド」でとタッグを組んだライアン・ゴズリング。そもそもこっちの映画の企画の方が先に動いていたらしいが、結果どちらでもタッグを組むことに。自分を必要以上に出さないニール・アームストロング。主人公としては派手さのない役はライアン・ゴズリングが得意そうな配役。夫の帰りを待つ妻を演じたクレア・フォイの演技もなかなか光っていた

なんでこのタイミングでアポロ計画の映画なんだと思ったが、今までの映画はあまりに劇的に描きすぎていた。この作品は共に宇宙を目指す感覚をもたらしてくれる。当時、世界中が熱狂して、ほんの少しでもひとつになった時代を感じさせてくれる。ニール・アームストロングのあらゆる感情を体験することができる。デイミアン・チャゼルの魔法がそこにある
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