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ファースト・マンのsomaddesignのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
5.0
スペース彼岸参り

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鑑賞後の復習してたらキリがないのでやめた。
科学考証やトリビアは好きモノの諸兄に任せた!

ライアン・ゴズリング演じるニール・アームストロング船長の伝記映画。
宇宙飛行士の資質なのかもしれないけど、分かりやすく感情の起伏があったり、取り乱したりしないキャラクターなせいで終始何考えてるかわからない。
「ブレードランナー2049」に続いて、無機質でアンドロイドみたい。そういえば、そんな役多いな、「ドライブ」とか。


伝記映画といえども、英雄譚でも半生記でもなく、アームストロング船長の苦悩や葛藤に迫る内容でもない。人類初の偉業を讃える作りですらなくて、観ていて何処に連れていかれるのか分からない。

幼い娘や仲間達……たくさんの喪失を抱えた男が、それだけの犠牲を払って尚彼岸に渡る話に思えた。三途の川を渡って帰ってくるような。クールな表情のすぐ下で、どんな苦しみや悲しみを抱えているのか、忖度しながら見る感じ。
観客はアームストロング船長の船に強引に乗っけられて、宇宙へ飛び出す不安や恐怖に晒される一方で、当のアームストロング船長は極めてクールなのが面白い。みようによっては、度重なる喪失で心を病んでしまってる人にも見える。

実際にパニックから縁遠い淡々とした人だったようで、引退後不慮の事故で指を切断してしまった際も、冷静に落ちた指を氷詰めにして病院で縫合してもらったとか。
家族にも心を開かない人だったのか、クレア・フォイ演じた妻ジャネットとは40年近く連れ添ったのちに離婚。その後すぐ別の女性と再婚してたりリタイア後も毀誉褒貶の激しい人だわ。

同乗のバズ・オルドリンもまた複雑な人で、不安や恐怖を不謹慎な憎まれ口で吐き出してたようにも見えた。自分と船長どちらが人類最初の一歩を踏み出すか譲るか悩んでたそうだし、人類二人目の栄誉に甘んじたことを恥じて船長との間に感情的なしこりが残ったよう。

“ Lunar Rhapsody “を筆頭に劇伴もまた特徴的。映画でテルミン聞くのいつぶりだろう? 電子音楽なのにレトロで懐かしい。当時の古いシンセを導入したり、レスリー・スピーカーを使った音響効果も面白くて、宇宙の緊張と家庭の緊張(国家間/人類レベルの話と、超ご家庭の問題のスケール感)が行ったり来たり。舞台もスケールも目紛しく回転して、頭クラクラして酔いそうな鑑賞後。


13本目
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