みきちゃ

ファースト・マンのみきちゃのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
4.6
余韻が…。ぼーっとする。

映像圧と音圧がはんぱなく、え?いまGかかってる!!と勘違いしかけた。この閉塞感。激しい揺れぶれ。機体が軋む音。カメラの使い分けによるヴィジュアル的振り幅。ロケットこわい。宇宙こわい。ゴゴゴゴゴゴ…。体調次第では十分酔えたかもしれない。閉所恐怖症だったらシアターから逃げ出してたかもしれない。

"宇宙を目指して月に行ったぜアメリカ万歳!!!"ではないアポロ計画。あの国の歴史に残る神話を、今も薄れていないプライドを、こんな風に描いちゃったチャゼル監督めちゃくちゃかっこいい。やったったなー。

再読中の森博嗣のスカイクロラシリーズで、パイロットがパイロットという職業について言及する箇所がある。要約すると「パイロットは空へ上がることで死ぬ必要など全くないのだが、飛ぶことは必然的に、命をかける、という行為になり、これは空中での絶対的な力学であり大前提。ほかの乗り物操縦士とは異なる点。"練習"をすることは事実上不可能で、一度墜ちれば終わり。それまでの努力も何もかもがゼロになる」という感じ。ファーストマンを観ながら、この箇所が何度もよぎった。そんな職業宇宙飛行士の父親がいる、ある家族のドキュメンタリー的な体験型映画。国家プロジェクトを背負った寡黙な男の、極めて主観的で閉鎖的な物語。


以下ネタバレ
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ニールの愛娘カレンちゃん。よくブランコに乗って揺られていた。小さな体で、病と戦いながら頑張っていた。薬の副作用で吐く、吐く、吐く。看病もむなしくカレンちゃんは亡くなり、可愛い小さな棺桶に納まってしまった。

カレンちゃんの死を引きずったまま、NASAへ転職したニール。トレーニングでぐるぐる回転して吐く、吐く、吐く。失神しながらもトレーニングを止めないニールは、カレンちゃんの病を追い体験しているつもりだったのかもしれない。ニールの身近に何度も何度も死が訪れ、死神がずーっと寄り添っているかのようだった。そして、ほんまに大丈夫かこれ??と心配になる、まるで棺桶のような宇宙船に押し込められて、往路の約束もなく飛んだニール。

死に場所を探すことで生きているかのようだったニールは、生きて月に到着してしまい、自分ではなくカレンちゃんを埋葬して帰還する。長い、長い、弔いの終わり。ニールの再生の旅の終わり。

NASAの面接の台詞がいちいち最高だった。言い回しが絶妙すぎて覚えらんなかったわーくやしい。

奥さま。ジャネットさま。素晴らしかった。息子二人と向き合わせるところなんか鳥肌もん。最後のシーンもなんなのあれ。ララランドといい、ラストシーンの魔術師チャゼルー!

完全に劇場IMAX案件だったなあ。とりあえず劇場でみれてよかった。観賞後は澄んだ空気に包まれた。やー、よかったー。
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