エクストリームマン

ファースト・マンのエクストリームマンのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
3.6
It'll be an adventure.

栄光のアメリカ史の1ページではなく、物静かな男の昏い情念と巡礼としてのアポロ計画。止まることなどできなかったのはニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)もアポロ計画も同じで、あまりにも多くの人間が死んでいく中でも彼が淡々と月へ向かったのは、それが彼にとっての償いでもあったという解釈。なんて暗い映画!陰々滅々。まぁ、明るく勇壮なトーンで描かれることが普通なジャンルだからこその逆張りと、宇宙=死の世界という定石を組み合わせていると考えると、割と手堅い企画な気がしなくもない。こんな陰鬱とした映画をたくさんの人が観たがっているようには思えないけど。

強い顔のおっさんがたくさん出てくるけど、殆ど全員死ぬという戦争映画もビックリの致死率。宇宙開発競争が紛れもない米ソの“戦争”であり、宇宙飛行士たちがその突端に立たされていたことを考えると至極当然とも思える。「それでも、NASAも宇宙飛行士も頑張って月に到達しました!やったね!!」と捉えるのか、「気がついたら誰も止められなくなっていた。止める選択肢なんてとうの昔になくなっていた」と捉えるのかで物語のトーンは当然変わるわけで、後者だと捉えた場合、必然的に月への到達がそのままカタルシスとなるわけもない。月面探査船は棺桶のよう、月は紛れもない死の国として描かれていた。