セザンヌとゾラの友情にテーマを絞っており、セザンヌの絵画や絵画論はほとんど出て来ない。女に手を出すのが早いところは自分のイメージと少し違っていたが、気難しくて仲間やパリに馴染めない姿はいつも通りのセザンヌだった。
ゾラの献身的な友情とそれを受け止められないセザンヌが、美しいエクスの風景と共に描かれる。絵でお馴染みの赤茶けたエクス・アン・プロヴァンス特有の土壌やサント・ヴィクトワール山は繰り返し映される。セザンヌが好んで描いた「水浴」を意識したシーンもあり、絵画そのものを見せる代わりに、映像から連想させる方法が取られている。有名な「リンゴは動かない」とモデルに文句を言うシーンも。
ラストも美しくまとまっている。セザンヌは晩年大きく評価され、若い画家たちに崇拝される存在になっていくが、そこはあえて映画では描かれない。あくまでもテーマはゾラとの友情であり、セザンヌの生涯ではないということなのだろう。