アンタレス

セザンヌと過ごした時間のアンタレスのレビュー・感想・評価

セザンヌと過ごした時間(2016年製作の映画)
3.4
エミール・ゾラは母子家庭で育った貧しい少年であった。虐められることも日常茶飯事である。しかし、ゾラを見捨てず助けに入ったのは、2つ歳上のポール・セザンヌ。後に『近代絵画の父』と呼ばれる男だ。
ゾラとセザンヌの性格は正反対であったが、詩作や執筆活動に勤しむゾラと、絵画にのめり込むセザンヌ。お互いの才能を認め合う親友であった。そして、いち早く世間に評価されたのはゾラであった。出版した『居酒屋』は爆発的にヒットし、ゾラの作家、美術批評家としての立場を磐石なものとした。
しかし、セザンヌの絵は高い評価を得られず、なんとかサロンに出展できても屈辱的な扱いを受ける。
二人の立場には明確な格差が生まれ、否応なくその格差を痛感するセザンヌ。40年にも及ぶ友情に少しずつヒビが入っていたが、決定打になったのは、ゾラの新作小説『制作』の出版だった。


ゾラとセザンヌ、二人の歪な友情はしっかり描写されているものの、引き込まれるだけの魅力が足りなかったように思う。
単調に時系列順に展開するのではなく、年代をシャッフルしながらストーリーを進める構成は素晴らしかった。
宗教や哲学、歴史の知識を必要とせずに観賞できる印象派の作品、そしてその作者たちが次々に登場するので、多くの日本人に馴染みやすいとは思う。そして美術に興味がある人にも推薦できる作品だった。
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