ベルサイユ製麺

ブリムストーンのベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

ブリムストーン(2016年製作の映画)
3.8
西部劇、の体裁。(←定義がよく分からないので…)

一章 啓示:黙示録
リズとその夫、善良な夫婦。長男は前妻の子。それと幼い娘。リズは口がきけない。
街の教会。信頼を寄せられる《牧師》。牧師とリズの間には何やら不穏な空気が…。
リズは助産師のような事をやっていて、どうしても救えない子の命を絶つ決断をしたせいで、その一家から強い怨みを買う。
報復を恐れ、リズ達が街を離れることを決断した、その夜。
夫が変わり果てた姿で見つかり、(…)絶命。更に家には火が掛けられ、リズは子供達を連れ逃走。
…犯人は…。

二章 脱出:出エジプト
荒野で行き倒れの少女ジョアナ。拾われ、娼館に売り飛ばされる。囲われ、それでも僅かな自由に束の間の安息。友人の死、そして忌まわしい、あの《牧師》!が現れる。運命を切り開き、舌を捨て、リズになるまでの記録。

三章 起源:創世記
まだ幼いジョアナ。父は厳格な《牧師》!!
母は父の言いなり。何故なら聖書に“苦労するのは女の宿命”と書いてあるから。
やがて怪物化した父は天啓のより母を排除し、ジョアナと契りを交わそうと…

四章 報復:審判
子供達を連れ、逃走のリズ。そして運命との対決を決意する。


……………重い。
ジャンル問わず、ここまで気が滅入る作品は滅多にないのではないか…。ラースやハネケの様な作為的な悪意では無く、暗い人が暗い話を暗く撮った、という風。とにかくずっと暗い。重い。そして残虐…。
面白い、に相当する何か他の適切な言葉は無かったですかね?不謹慎な感じのしないやつ。…止む無く使いますが、面白いです。
構成はギャスパー・ノエ『アレックス』を彷彿とさせるトリッキーさですが、見た目の面白さだけでは無い、作劇上、“テーマ”上の意味が有るように思えます。まあともかく惹きつけられた。
撮影が良い。西部劇的に良いかはよく分かりませんが、クリアーで、的確なライティングで、見たいもの・見たく無いものバッチリ脳に突き刺さります。非の打ち所がない美しい風景。チャンキーなゴア描写の生々しさ。“青空の下、荒野の、小さな掘っ建て小屋の厠の屋根の上で、用足し中の相棒の首に縄を掛け、縛り上げる無法者”のショットがこんなに美しいとは…。

まるで液体金属とかをたらふく飲まされたみたいに、消化出来ない重たい物で腹を満たされたみたいな酷い気分。それをたまに凄く求めてしまう事があり、正にそのタイミングにピタッとハマり、とても心地が良かった。…でも、この作品の事、全く分かりません。
⚫︎各章のタイトル
⚫︎牧師
⚫︎女性の運命。etc…。いわゆる例のヤツです。もうお手上げ。筋書きはちゃんと理解出来てると思います。メッセージの方向性ぐらいも、なんとなく分かる。でも、細部に秘められているであろう宗教的な隠喩や、この物語が全体として浮き彫りにする物が具体的に何なのか、などは本当にサッパリ分からないです。悔しい。いい加減勉強します。良いテキストが有れば教えて欲しい…。

ダコタ・ファニングが良い!…のはいつもの事なのですが、ガイ・ピアーズですよ!もう最悪に怖いです!マッチョの理屈っぽいサイコなんて関わりたく無いスリーカード。さらにペドだのなんだの…。新しいホラーヒーローの誕生だとすら思いましたね。ナマハゲの代わりに牧師の装束で「天啓を得でねぇ子はいねがー」と練り歩けば、みんな怖がって手作り天啓エピソード語り始める事請け合いです!

因みにこの監督、今作が三本目の作品なのですが、デビュー作は『恋するレストラン』♡
…この二作の間に何が有ったの⁇ベルトで酷く打たれた?今後の成り行きからも目が離せません!暴力映画のニュースター登場!

あと、スタッフロールの最後、白い小さい字で
xxx!
って暫く写って、やがて消えていくの、…アレ何ですかね?