19世紀フランス。
シャルルは、冒頭で誰かとの決闘沙汰を起こす。
腕を狙ったが相手がよろめき心臓を貫いてしまった。
裁判になれば三度目、刑は重い。パリから夜中馬を走らせ叔母のいる田舎の別荘に逃げ込む。
その屋敷の外見はまさに城。叔母は女王のようなドレス。
シャルルは同じくそこを訪れていた、婚約中のマチルドに恋をする。
夫は弁護士で入れ違いでロンドンへ発ったところ。
そこへ、シャルルの元愛人のフローラがやってくる。
彼女も婚約中だが夫のクレミュ公爵は仕事で不在。
挨拶に寄ったと嘘を言うが、シャルルの決闘事件を手を回して処理したのが彼女で、シャルルに交換条件の依頼をしに来た。
夫となる公爵にはお気に入りの若い女がいるので、シャルルに、その操を奪ってすぐ捨てろという。
恋に落ちたシャルルは気が乗らないが断れない。
シャルルのマチルドへのアプローチは落馬して心配させたり、庶民へ施しをしているふりをしたり、と卑怯なものばかり。
それまでそんな恋愛しかしてこなかったのだろう。
マチルドへの恋心は嘘ではないが、一方でそれまでの卑怯な行動を修正できないままのシャルル。
更に、フローラの夫が夢中の娘イザベルと、その母イフジェニーまでやってくる。作戦決行のためフローラが呼び寄せた。シャルルは持ち前の口の上手さで難なく実行。
しかしフローラの嫉妬は他にもある。
ともあれシャルルとマチルドは恋仲となる。
首ったけのマチルドに対し、シャルルは徐々にドライな態度を見せる。
シャルルはおそらくこれまで一人の女性だけを愛したことがない。
恋したはいいが、一人だけに絞ることに不安も感じている。
それが伏線となって、シャルルが留守にしたとき、マチルドは愛を疑うことに……。
屋敷、調度品、ドレスが本当に見事。
これだけで揃えばどうしたってそれなりの作品になるだろう。
フローラ役ナタリー・ドロンの悪女ぶりが凄い。
限りない嫉妬心、全てを手に入れたい所有欲、
社交界での権力。
愛憎が一緒くたで、愛する人が例え死んでもいとわない。
作品のトラブルは全て彼女が絡んでいる。
書簡体小説を映画化して評価の高かった『危険な関係』の監督自身によるリメイク作。
パルムの僧院、椿姫、ラ・ボエームなどの要素も感じられた。
1時間ちょっとしかないのでドラマ感覚でさくっと観られる。
誰と誰がどういう関係か見失うと話が分からなくなるので、しっかり追い付いて観ることをお薦め。
『危険な関係』は4Kリマスターでの上演が始まったので、この古い方を先に観たほうが良さそう。