ちろる

マッドバウンド 哀しき友情のちろるのレビュー・感想・評価

4.0
戦争によって祖国を離れ、小さな田舎町の生活から距離を置いたばかりに気付かされた故郷の生きづらさ。

戦場では白人と同じように扱われ、歓迎されていた黒人のロンゼルは、差別色の強さに愕然とする。
戦地から戻りPTSDに苦しめられているジェイミーもまた、酒で紛らわすような落ち着かない日々を過ごしていた。

2人とも戦争では大切な戦友を喪うという哀しい経験をし、肌の色も関係なく戦っていたからこそ生まれた友情だが、それは故郷ミシシッピでは許されないものだった。
同じ状況下で生きる二つの家族、それでも人種が違うだけでこれほどまでに立場が違うのかと愕然とさせられる。

KKKによる黒人虐待の様子など、観るに苦しい映像があるにもかかわらず、この作品に魅力があるのは、ジェイミーとロンゼルの2人の友情がとても尊く、2人が共に笑っているシーンは多幸感あふれるものだったからだろう。

物語は、愛で終わらなければいけない。
たとえその途中に悲劇が挟まれていたとしても・・・

ジェイミーの側にいたローラの立場も含めて非常に暗く、観るのも苦しい作品ではあるが、ラスト少しだけ救われるようなシーンがあったのが印象的。

この映画では監督、撮影、編集、音楽、原作がすべて女性によって手掛けられている珍しい作品であった。
「珍しい」とわざわざ書く必要もないのかもしれないが、まだまだ男性社会である映画界において、殆どが女性によって手掛けられたのもなかなかないので特記した。
そして、女性ならではの繊細さを是非この作品で感じてほしい。
重く、哀しい話ですが、ラストギリギリまで心揺さぶる本作、是非多くの人に観てもらいたい。
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