Violet

勝手にふるえてろのVioletのネタバレレビュー・内容・結末

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

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評判通り、面白かった!!!

松岡茉優演じるヨシカの魅力がすごい。
絶滅動物とタモリ倶楽部が好きで、
中学生の頃に恋をしたイチを24歳になった今でも脳内に召喚して片想いを続けている。
ヨシカの設定も面白いし、ちょいちょい挟まれる小ネタのセンスと間の絶妙さが作品をより魅力的にしていた。
特にお気に入りなのは
・めっちゃ瞬きする整体師さん
・釣りのおじさんに視野見を教えるところ「わたし今おじさんの浮き見てるからね?」
・オカリナが岡里奈さん
めっちゃ笑った。笑

釣りのおじさんやコンビニの店員さん、バスのおばさん、カフェの金髪美女、めちゃめちゃ幅広い人との交流があって、「友達がいないなんて嘘じゃん!」と思っていたら、中盤(後半?)のミュージカル調になるシーンですべてが明らかになり、今までケラケラ笑って見ていたのになんだか怖くなって笑えなくなった。
妄想と現実。
妄想の中で生きることの気楽さと、虚しさ。

「わたし友達いないからさ」妄想の中のヨシカは金髪美女にこう言い、それに対して金髪美女は「そんなことないよ!」と返していた。
自ら会社を休むと飛び出したヨシカだが、自宅で過ごしていても連絡が来ていないかと何度も何度も携帯をチェックしていた。
そう、ヨシカはずっと「人と関わりたい」と思っていたのだ。けれど、怖くてぶるぶる震え、行動に移せずにいた。

中学生の頃はイチを「視野見」で追い続け、卒業後も脳内でイチを召喚して恋愛をしていた、と思っていた。
イチとの再会を果たした際、「君、僕のことをよく知ってるみたいに言うんだね。」とイチが言うが、まさにヨシカはイチをわかっている「つもり」になっていたのだ。
視野見でずっと見ていたイチ。
猫じゃらしのようだと思っていたイチ。
けれどイチは自分はいじめられていたと思っていた。
視野見では見えるはずのものも見えない。
そしていくら妄想を重ねたところでイチはヨシカの名前さえも覚えていなかったのだ。このシーンは胸がきゅーーっとなって切なかった。

今目の前にいるニと向き合おうと決心した最後のシーンがすごくよかった。

勝手にふるえてろ。
それは、ヨシカが今まで妄想に逃げていた自分に向けて放った言葉であり、
これまでの自分から一歩踏み出した証なのだ。

妄想ではなく生身の人間と真っ正面から向き合うことの難しさと尊さを鋭い切り口から描いた作品。
Violet

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