MasaichiYaguchi

勝手にふるえてろのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)
4.3
綿矢りささんの同名小説を大九明子監督が映画化した本作では、意外にも映画初主演の松岡茉優さんのキュートさを中心にその魅力が溢れている。
この作品は一人の女性が二人の男性と繰り広げるラブコメディではあるが、今流行りのキラキラしているような青春恋愛物とは一味も二味も違う。
今まで恋愛経験も無いヒロインの江藤良香(ヨシカ)はエキセントリックで、脳内で恋愛するような“中二病”に罹患したまま大人になってしまった女の子。
そんな彼女が中学時代から一途に思い続けているのがクールな同級生「イチ」なのだが、映画ではそんな初恋相手との思い出が甘酸っぱく描かれていく。
そんなある日、OLとなった彼女は同期の暑苦しい「二」に告白される。
ここから彼女の脳内彼氏とリアル彼氏という不思議な三角関係がコミカルに、ある意味、演劇仕立てで繰り広げられていく。
アンモナイトをはじめ古代の絶滅した動物を愛するヨシカは自分の殻に籠る不思議ちゃんのような女の子だが、私も学生時代にヨシカ的な部分を多く抱えて日々過ごしていた思い出がある。
思うに人は表面的には微塵も感じられないが、ヨシカ的な部分を心の何処かに持っているような気がする。
いきなりモテ期に突入して暴走し始めたヨシカだが、あるピークのポイントで失速して、夢から覚めたようにリアルな現実に彼女は直面していく。
この一連のシークエンスは切なくて心の琴線に触れる。
はたして妄想交じりの彼女の恋愛劇は何処に“着地”するのか?
映画では寛容さや温もりを持って彼女の恋の結末を描く。
本作は、一人の女性の恋愛における人としての成長をユーモアと優しさを交えて描いた映画だと思う。