青いむーみん

勝手にふるえてろの青いむーみんのレビュー・感想・評価

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)
4.6
ファックファックファック!!!ファッキンサイコーだったぜ松岡!!松岡による松岡のための松岡の映画。

もう知れ渡っているであろう若手ナンバーワン女優松岡茉優が初主演を飾ったこの映画。『桐島部活やめるってよ』で火がつき、『ちはやふる』ではあの詩暢ちゃんを降臨させる偉業(まばたきしない演技に激惚れ)を達成し、待ちに待ったコメディで、しかも綿矢りさの『勝手にふるえてろ』なんてまさにおあつらえ向き。期待しかなかったこの映画、やはり想定以上にドライブさせまくってくれました。今作でも当たり前のように瞬きはコントロールされています。コメディなので表情の展開が激しく、沢山の表情が観られて楽しいです。極端に切り替えたり、グラデーションで変えたり、とにかく松岡百面相です。そして歌まで歌います。心情吐露する劇中歌ですが、あれが同録であることの素晴らしさに監督への感謝と松岡茉優のコメディエンヌ無双の一端をここに見ます。
などなど、松岡茉優の演技が凄いのは分かっていたけど、大九監督が原作をうまくデフォルメしていて広げ方もまとめかたも上手かったのは嬉しい想定外。モノローグをどうするのかと思っていたらよくある手を使ったんだけど、これをちゃんと回収しない映画が多い中、一曲でバッチリ綺麗にされちゃいました。お見事。その発想マジ神。あと、鏡の関係が原作よりもマスを狙って強調されてるんだけど説明しすぎない妙は関心。「勝手にふるえてろ」というセリフの対象の違い、これは映画の方が深く、意味があるように感じた。

イチは原作よりもやっぱりイケメンになっちゃったな。冷めた感じは出てたし、悪くはないんだけど原作では同窓会時に頭薄くなってることが発覚してもヨシカの気持ちはびくともしないのでその想いの強さが強調されるんだけど、まぁそれがなくても想いの強さは十分出てるし「私はそれは嫌かも」って女性客に思わせるのも悪手かもしれないからこの設定変更は問題ないかな。キミスイの北村匠海なので演技は心配してなかったしイチというキャラクターを理解してやられてたのでよかったです。
二は原作よりも隠れてる部分がなくて開けっぴろげな奴で憎めなくて、もう中学生みたいで、イチに対しての二という対比でいうとやはりデフォルメされているという意味でより明確なので正解でしょう。黒猫チェルシーってUK時代にちらっと聴いただけだったのであんなにポップでキャッチーな曲やってるとは知らなかった。
この映画脇も凄いです。古舘寛治の気のいいおじさん感、前野朋哉の無害な安心感、池田鉄洋の真面目ふざけ感、片桐はいりの普通の人の端っこ感など、各々ドハマリの役柄で支えています。そんな中、趣里の役はヨシカの憧れの象徴なんだと思います。やりたいことをやってその奇抜ささえ飼育してしまうようなカッコよさに憧憬を持っているのでしょう。そして石橋杏奈さんの美しさには胸で十字を切り手を合わせて祈るだけです。
ちょっとだけ言いたいのは、劇中歌は面白い曲になっていたと思うのですが、狙ってやってるんだとは思うけど他の部分の音楽がどうもペラッペラで「コメディです」ってやりたいのかもしれないけどあまり好感の持てる音楽ではなかった。主観的なことだけれどちょい残念。

主人公は女性だ。しかしこれは女性のためだけのものではない!うわぁこれ俺じゃん…ってシーンありまくりのてんこ盛り。性差より人差の方が大きいというのを象徴しているように感じた。だから男性も”視野見”で終わらせるのではなく真正面から観るといい。
ウェイウェイ軍団には馬鹿にされて終わるかもしれないけど絶対にこの映画を欲している人がいるはずだ。今の”私無敵”状態の松岡茉優を見逃すな。現状最強のコメディエンヌここに爆誕だ。


映画を観て舞台挨拶に外れたことを未だに悔しく思う日々が延長されてしまった・・・ファック!