あなごちゃん

勝手にふるえてろのあなごちゃんのレビュー・感想・評価

勝手にふるえてろ(2017年製作の映画)
5.0
「面倒くさい女」と言われ、「どんなところが?」と聞き返したら無言で眉をしかめられ、「面倒くさい女かぁ、、」と独り言を言ったら、目を逸らされたことがある。面倒くさい女にならないために振るっても、私は面倒くさい女を脱することができない。

この映画も面倒くさい女が主人公。
絶滅動物に自分を重ね合わせ、自分は淘汰され絶滅されるような異常性を抱え込んでいると被害者意識を持っている。
可愛そうで可愛い絶滅動物。
可愛そうで可愛い自分。
可愛そうで可愛い好きな人。
彼女は、いじめられていた可愛そうで可愛い男を10年間も片思いし続けることによって、現実を直視しないで居続けた。

そこに自分に好意を抱いてくれる男が現れる。初めて告白されたことに歓喜しながら、一方で自分を好きな男を邪険に扱うことによって彼女は自分の殻をさらに強固に守っていく。彼女は男を、二番目の男、サブ男だと評して、二と呼ぶ。

彼女は男を名前で呼ばない。本命を一、サブ男を二と呼ぶ。そう呼ぶことで世界から傷つけられることをシャットアウトする。二と付き合いながら、一と付き合う策略を考えている。一に振られたら、二に妥協しようと振る舞う。自分が好意を抱いている相手には好意を示されず、自分が好意を抱かない相手からは好意を示される。恋愛のもどかしさの解決案として、好感度マックスのハイパーライクを殺して、自分を好きでいてくれる男を選ぼうと合理的に考える。
追いかけるよりも追われる恋愛を選ぼうと、初めて二を人間として認識する。

もう少し二を好きになれた過程を細かく撮って欲しかったと思いつつも、愛するよりも愛されることを選んだ彼女は、絶滅される側を抜け出し、子孫を残す側に移り変わったということだ。彼女は絶滅危惧種ではなく、一人の脈々と続いて行く生命体に変わった。

面倒くさい女が、被害者ヅラしてヒスりながら、それでも恋愛、その果ての絶滅回避を選ぶ過程が面白かった。